ファラオ・カーメンは、古代アラハギーロ王国が最も隆盛を極めた時代の王だったとされる。
富と名声の頂点。華やかな玉座はしかし、孤独の座でもあった。
頂点であるが故に、誰にも心を許すことができない。彼は最も偉大な王であるが故に最も孤独な王でもあったのだ。
そして死後、ピラミッドの守護者となった彼は、そこで初めて友を得る。皮肉にも彼の墓を暴きにやってきた、秘宝の探求者、シンドラがそれだ。
好敵手として戦ううちに友情をはぐくんでいく二人……アラハギーロの有名なピラミッド伝説だ。
どこまでが歴史で、どこからが伝説なのか、それは定かではない。
だが少なくともこの日のカーメンは、孤独に悩むことはなかったはずである。
ドラキーが歌い、エルフが踊る。ダンスホールと化した第9霊廟。その雰囲気に誘われてか、歴代のファラオが続々と集まってくる。
まず駆け付けたのは秘宝の使い魔。この時は拍子抜けした表情だったカーメンだが。次に現れたのはファラオ・ラー。
ルドラを呼ばれてはたまらないと慌てて撃退に向かうも、ファラオ・ゴレムがおっとり刀で駆け付け、さらに大物、ファラオ・ニビスが馳せ参じる。小さくてよく見えなかったが、ガルも遊びに来ていたようだ。
この乱戦を制したのは、リルリラが放った百花繚乱の技だった。妖精の舞と色とりどりの花びらにファラオ・カーメンすら眩惑され、幻と踊る王たちをラッキィの呼んだ流星と私のギガブレイクが薙ぎ払う。
扇の底力は予想以上のものだったらしい。
戦いは優勢に進み、カーメンの体力も残りわずかと思われた。
だが敵もさるもの。怒れる古代王が天より光を呼び寄せると、蘇生役であるドラキーのラッキィと僧侶の二人がまとめて薙ぎ倒された。攻守逆転。一瞬で窮地に陥る。
さすがにここまできて負けるのは痛い。私が世界樹の葉を投入しようとした、その矢先……
「九死に一生、起死回生!」
突然、高らかな歌声が響いた。
「よ・み・が・え・れ--!!!」
少々気の抜ける節回しだが、これは踊り子の切り札、蘇り節。蘇生の光が倒れた二名を包む。私は道具袋に伸ばしかけた手を止め、カーメンへの攻撃を続行した。
この後もファラオは必死の抵抗をつづけた。特に、ファラオ・ヘルマを呼び出された時には背筋が凍ったものだが、ここはあえてカーメンに集中攻撃、ヘルマが暴れる前にこれを撃墜することに成功した。
一人残されたヘルマは、ひとしきりダンスを踊っていたようだが、同じ舞い手のリルリラがこれに対抗、ついに踊り勝ち、激闘を制した。
踊り子として初めての本格的な戦いに勝利し、リルリラは満足げな様子である。
私にとっても、踊り子、ドラキーと魔法戦士の相性の良さを確信できる戦いだった。
サポートメンバーとの戦いは王道とは言えないのかもしれないが、目立たないだけで、道は至る所に存在する。試行錯誤して、それを探すことはこの上ない喜びだ。
ファラオの像がふてぶてしい笑みを浮かべる。次はどんな手で攻めてくるかと、挑戦者たちに問うかのようだ。
私もまた笑みを浮かべた。
砂漠の砂が尽きないように、我々の楽しみも、まだまだ尽きることは無さそうである