鋭くとがった岩が、全てを噛み砕く竜の乱杭歯のようにあちらこちらに入り乱れる。地肌に張り付いた植物の蔦は、さながら口元に浮き出た血管である。
ナドラガの祠があるという洞窟の入り口は、口を広げた竜の大顎を思わせる、不気味なものだった。
我々は解放者殿や勇者姫にやや遅れてこの浮遊島に到着した。
竜に喰われる獲物の心境で洞窟に飛び込むと、異様な静寂と冷たい空気が辺りを包む。自分自身の足音だけが、暗い洞窟の中にこだまするようだった。
洞窟の中には竜頭像が並び、固く閉ざされた重厚な門が深部へと至る道をふさいでいた。
かつて炎の領界で訪れたナドラガの祠にも同様の門があったのを思い出す。
一体、門の奥には何が隠されているのか。ナドラガ神の肉体は五つの領界に分割されて封印されているというが……
我々が思索にふけっていたその時、風が破裂するような轟音が洞窟を貫いた。
続いて剣戟の音。雄叫びと悲鳴、空を焦がす閃光。
戦いが始まっている!
我々は深部への門を無視して洞窟を通り過ぎ、開けた場所へとたどり着いた。
そこには剣を手にした勇者とその盟友。そして彼らに襲い掛かる、巨大な白竜の姿があった。
さらに奥には、あの風乗りの少女の姿もある。どうやら気絶しているらしい。彼女の周りにはナドラガの教団兵が数名。
「加勢するぞ!」
私の号令で、仲間たちが走り始めた。