暇を持て余した掲示板の管理人が、霧に紛れてウクレレの音を響かせる
星を愛した詩人として、星の巡りを見守る観測者への解説役として
彼とも彼女ともわからぬ星の語り部の歌声につられてか
黒い羽が一枚、掲示板の前にポトリと落ちた
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「おやおや、これは珍しいお客人のようで」
語り部は再開を懐かしむように、しかし目を合わせぬように深々と帽子をかぶり直した
「久しいね、吟遊詩人...星の集いの創立メンバーさん」
「...そう呼ばれるのも何年ぶりか、私にその称号は重いですよ。お二人を守ることもできず、こうして足も失う始末...全く、貴方にもお姫様にも合わせる顔がございません」
「あれは仕方のなかったことだろう、それこそ星が悪かったというやつじゃぁないか?」
まるで思い出を懐かしむかのように、語り部はその客人と親しげに言葉を交わす
「それで、引きこもりの貴方があの洞穴から飛び出てここまではるばる、生身で来たのですから、私かこの掲示板に用があるのでしょう?」
「あぁ、少し...計画の先を見に来たんだ」
客人は軽く下駄を鳴らすと、モノクルをかけなおし、掲示板から数枚の写真を取り外した。
—————偽りの瞳から涙を流す少女の姿の写真や、真っ黒く身が染まった幼い竜の写真。
そして、黒衣の剣士の写真
満足そうに客人がその写真を見つめると、小さく微笑んだ
「計画は滞りなく...か、いやはや楽しみだ」
「...私は止めませんよ、ただ見届けるだけですから。星々の行く末を...」
客人は何か言葉を返すわけでもなく、再び黒い羽を散らせてどこかへ消えていった。
空に浮かぶ小さな白い星が徐々に黒く蝕まれていく様子に、気が付いたものはいなかった
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場面は変わり、春の間際
徐々に暖かくなっていく頃合いで、冬眠していた魔物たちも徐々に目を覚ましてくるようになったが
その温もりに反して、どこか緊張感のある冷えた依頼が、各地の冒険者たちの目に付く酒場などの掲示板に貼られるようになった
『オーグリード大陸にて謎の魔物の目撃情報あり』
とのこと
曰く、頭の先端から尻尾の先まで真っ黒な、ドラゴンキッズのような見た目の魔物が時折見かけられるようになったらしい
大して強くもなく、初心者冒険者でも簡単に討伐はできるが、赤黒い雷のようなブレスを吐くこともあるという
新種の魔物なのかそれとも、別の何かが原因なのか...
その調査や討伐の依頼が目に付くことだろう