悪は滅びた、しかし救いはなかった。
人々はいまだ悪夢の中にいる。
いや、悪夢の虜囚であることに気づいてしまった。
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絶望の中にいる人たち、
わたしは彼らになにができるだろう。
悪に見放され、
善にも忘れられた彼らに
なにができるというのだろう。
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人は語ることで癒しを得るという。
ならばわたしは話を聞こう。
実と虚の狭間にいるかれらの言葉を聞こう。
私は忘れない、あなたたちが確かに生きていることを。
たとえ勇者が忘れたとしても。
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そうだ。
わたしは勇者の盟友でなくていい。
わたしの魂はかれら苦しむものとともにありたい。
わたしは・・・
救われぬ人々の声なき声を聴く女