「そーだな…連中、20人はいると俺は思ってるんだけど」
と、俺は自分の推察を口にした。
「え、なんで」
「あっち(強盗団)の依頼人が裏クエスト屋の店主に、『埋蔵金の分量は20人で山分けできる程度』ってなことを言ってたらしいんだよ。20人って数字がどっから来たのかっつったら、やっぱその人数で山分けするつもりだからじゃないか?勘だけど」
「ふーむ、20人ねー…2人で捌ける人数じゃねえってことか…」
と、化け狸は神妙な顔をした。
「その『2人』ってのは、俺と磯野郎のことでオッケー?」
「他に誰がいるってんだ。さっきも言ったように俺様、戦闘じゃミソッカスだからな?」
「デスヨネー」
「…で、人数の話に戻すが、今回の財宝確保に来てるのは20人全員じゃないと思うぜ?」
「それこそ何でさ」
「分業制だ。20人なんて大所帯が行き当たりばったりで動いたら、連携が取れずにあっという間に瓦解する。よっぽどリーダーシップのある奴が指揮するっていうなら話なら別だが、連中の行動を見る限り、そんな逸材は居ないと思うぜ?いちグループで動くより、いくつかの役割分けをして、何グループかに分かれて行動をしてると考えた方が自然だ。例えば、財宝確保班とコールタール家強盗班、それに逃走補助班とかかね」
「逃走補助?何のためのグループだい?財宝確保したら、普通に各自逃げるだけじゃダメなの?」
「あ、それはわかるかも。『裏クエスト屋』から逃げ切るためだな?あのおっかないおっさんを敵に回して、財宝を持ち逃げしようとしてるんだ。何かしら逃走経路を工夫しなきゃ、あっという間に捕まるぞ」
「そう、そんなとこだ。普通はやらない逃げ方…例えば海路に出るとかで、なるべく雲隠れできる可能性が高い手段に出る筈だ…出来るかどうかはともかく。だったら、メンバーの何人かは、そっちの逃走手段を確保するために動かす筈ってわけさ。
で、問題は『財宝確保班』が何人いるかってとこだが…勘で言うなら、グループの半分から3分の2くらいの人数はいるな。逃走補助班はそんなに人数はいらないから、残りの全員で財宝探しをやって、少しでも効率を上げようとする筈だ。つまり、10人から13人は財宝確保に来る」
「10人から13人!…詰んでない、これ?」
「まあまあ…職業レベルが互角なら詰んでるがな、そこは光明が見えてる。連中、キラーマシン相手取って戦線崩壊してたろ?で、あんたらはそのキラーマシンを退けてる。寡兵でその実力があるなら、多分こっちの方が『格上』だ。不意打ちや単独で包囲されなければ勝てる筈だぜ」
「…寡兵を気にし出したらキリもないか。そのダンジョンに入るのは連中も初めてだよな?だったら手分けして宝を探してるって線もあるし、付け入る隙はある…と思っておこう」
「ああ、そう考えておこうぜ…っと、着いたぜ。この広場だ」
化け狸は、移動を続けていた怪盗もどきの背中から、前方方向を指さした。作戦会議を続けるうちに、ようやく目的地へ到着したのだ。
俺たちが到着したその広場は、地図上で見ればカルデア山道の入り口を少し南下した場所にある。
周囲を丘に囲まれた広場の中心には、古代ウルベア文明の痕跡である石の台座が鎮座している。台座の周辺には茶色に苔むした柱が何本も立っている。周囲を囲む遺跡の森においては、特に珍しくもない光景である。
台座の奥には、モガリム街道とガタラ原野の境界を流れる川が見える。川の対岸には、モガリム街道側に属する小高い崖がそびえ立っていた。
化け狸によると、こここそ埋蔵金の眠る洞窟がある場所なのだそうだ。
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