オーガ以外の3人の男たちが、俺と怪盗もどきに猛然と襲い掛かってくる。人間、人間、ドワーフが三方から迫る。
得物は順にナイフ、片手剣、徒手。人間の1人が持ってる片手剣が一番やばい。
彼らが迫るのと同時に、俺たち2人も動いた。怪盗もどきは前へ、俺は後ろへ下がって通路の影へ。
距離ができた分、相手の3人は全員が怪盗もどきへ飛び掛かる形となった。
左手に逆手で持たれたナイフは怪盗もどきの胸へ目掛けて。片手剣は頭を割るように軌道を描く。徒手のドワーフは、怪盗もどきの動きを封じるため、下半身へタックルを繰り出す姿勢だ。
怪盗もどきがズンッと踏み込む。
さあ、何をやるんだ。まさか、『白雷七つ道具』なんて気の利いたアイテムを取り出すわけじゃないだろう?
怪盗もどきの一手目。ナイフが握られた相手の手の甲を、自身の右手で正面から押し込む。
ナイフを持った人間はそのまま押し込まれ、真後ろにいた片手剣の男もろとも跳ね飛ばされる。結果、片手剣の軌道が怪盗もどきの頭を掠めた。
なんだそれ、合気道か何かか?勢いに乗った敵をそのまま真後ろに飛ばすとは。
怪盗もどきの二手目。ドワーフのタックルをそのまま受ける。
ドワーフはそのまま、ウェディを押し倒すべくチカラを込める。
ウェディ、ピクリとも動かない。初めから、「このドワーフに、自分を動かす膂力はない」と見てタックルを受けたのだ。
驚愕するドワーフの腰を掴み、自身の腰から引きはがす。そのまま、ドワーフを床へ叩きつける。
ドワーフはその一撃で見事に失神してしまったらしい。再び立ち上がりはしなかった。以上、怪盗もどきの三手目および四手目。
ナイフ、片手剣の人間が起き上がり、再びこちらへ突進する気配を見せる。
片手剣の男が動こうとした瞬間、剣を握る手へ拳大の石がヒットする。俺が投げた石だ。
呻いた男は、片手剣を取りこぼした。
入れ替わりに、もう一方の男がナイフをこちらへ投げつけてきた。
やけくそに投げた割に、ナイフはこちらの胸目掛けて一直線に飛んできた。
意外にも投げナイフが上手い。内心ヒヤリとしたが、俺が投げた2投目の石で上手く撃ち落とした。
ナイフを持っていた男が2本目のナイフを構える様子は…ない。歯ぎしりするばかりだ。
この戦闘の場で得物を手放しちゃダメだろ。俺はドワーフに叩きつけたものと同じ煙玉をぶつけて、男を失神させた。
一方の怪盗もどきは、俺がナイフの男を相手取っている間に、片手剣の男と組み合っていた。
片手剣を取りこぼし、徒手となっていた男は、右手と左の襟をガッチリと掴まれている。怪盗もどきはそのまま、男の身体を自身に引き寄せる。同時に自らの左足を男の横に踏み込んで前進。右足は進行方向へピンッと振り上げ---
次の瞬間、人間の男は足を払い上げられ、地面へと叩き伏せられた。柔道で言う、大外刈りだ。
身体が回転し、右脇を露出させられた男は、怪盗もどきに3、4回踏みつけられ、悶絶しながら気絶した。人体の急所である腎臓をチカラ任せに打たれたんだ、もはや立ち上がれないだろう。怪盗もどき、なんて容赦のない奴…
仲間の3人を制圧されたオーガは、あまりの事態にわなないている。
「お、お、お前らァァァ~…!!!」
「…4人でかかりゃ、もう少し有利に戦えただろ。判断の遅い奴」
「~~~~~ッッッガアッ」
俺の挑発により、赤い顔が紫がかるほどに怒髪天を衝いたオーガは、近くにいた怪盗もどきへと襲い掛かった。
手四つでがっつりと組み合った怪盗もどきとオーガは、拮抗したまま動けなくなった。
この場合、恐るべきは怪盗もどきの方だ。自分より二回りも体格がいいオーガの男と組み合って、まるでチカラ負けしていない。
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