そして、裏クエスト屋店主は化け狸にひとつの課題(クエスト)を提示した。「『埋蔵金』を誰にも奪わられずに確保し、自分の元へ持ってくること」である。
ただし、オルカたち強盗団の裏クエストも発注している以上、そちらも成否問わず何らかの結論が出る状態にしないと、後々の処理が面倒である。達成目標が同じ「埋蔵金の獲得」であるため、片方が成功しても、失敗したもう片方の受注者が一方的に損をしては、発注者である裏クエスト屋に「騙された」という苦情(というか襲撃)が来るのだ。
そのため、店主は化け狸に「決行日は強盗団の裏クエストと同日とすること」と条件を付けた。それが、昨日から今日にかけての深夜帯だったのだ。
後の展開は、先に語った通りである。化け狸は俺や怪盗もどき、強盗団の間を縦横無尽に立ち回り、自らのクエストを見事に達成したのである。
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「まー大変だったぜ!」と化け狸は語った。
まあ、大変だったのだろう。疲労困憊するのも無理からぬ活躍だ。
ただし、無条件で労う訳にはいかない。俺たちも少なからず騙されていたのだし。
「よし、磯野郎。狸にヘッドロックをかけろ。まったりとな」
俺が頼むやいなや、右脇に化け狸をがっちり挟む怪盗もどき。彼なりに思うところがあるらしい。
化け狸のふくよかな顔面がギリギリ音を立てて変形する。
「イダダダダ!まったりと言ってただろうが白雷の怪傑!というかまったりしたヘッドロックってなんだ!」
「残念ながら僕にもわからない。だから標準出力でいかせてもらうよ!」
「ぶあー!悪かった、騙したのは謝る!だからもっとマイルドに絞めろ!」
バタバタと暴れる我ら。阿保である。
「あー、狸くんの肩を持つわけじゃないがね」と店主が語る。
「狸くんが君たち2人を仲間に引き込んだのは、純粋に手が足りなかったからだろうけどね。『埋蔵金』さえ手に入ったなら、別に適当なところで見限って、自分だけ報酬金を持ち逃げしても良かったんだ。その分取り分が増えたわけだし。
そこを、彼は君たちにもなるべく報酬金が出るよう立ち回ったんだ。現に、彼は君たちを伴って裏クエスト屋に戻ろうとしたんだろう?そこを頭に入れて遇した方がいいと思うよ、僕は」
それは、まあ。なんとなくわかっていた話だ。俺も、多分怪盗もどきも。
店主の話を聴き終えた怪盗もどきは、パッと化け狸を解放した。仕返しはこの辺にしておこう。
ゲホゲホと言ったあと、化け狸が最後の確認を話し出した。もうここまで来たら、する話はさして残っていない。
「さて。報酬金は240万。事前の取り決めより、分け前は3等分で、1人80万ゴールド。何か異論は?」
「異議なし」
「同じく」
以上により、裏クエスト『雇われ衛兵の陽動』は無事クリアしたわけである。お疲れ様でした。
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