「もうひとつ、いまいちわからないことがあんだけど」と、俺は疑問を口にした。
「コールタール家の主人っていう人のことだが…いくらキャリア形成に影響しているからって、噂話の後始末に250万ゴールドも払うもんか?俺だったらしらばっくれるけど」
「俺様も詳しいことは知らんよ。さっきの説明だって、大半はあの店主の言だったろ?事実と違うところも多々混じっているかもしれんし、俺たちの知らないところで色々手を回して、理想的な展開になるように手引きしていたとも限らんぜ。なんなら、『コルセットの埋蔵金』の噂話が順調に広まったのだって、あの店主が仕組んだって線も…」
化け狸はこの辺で押し黙った。
結局のところ、俺たちはあの店主の手の上で踊り狂っていただけなのかも知れない。コールタール家にとってはひたすら迷惑な話だし、強盗団の連中も…いや、あいつらの肩を持つのはシャクだな。なんにせよ、誰かの思惑通りにはまった感じがあるのだ、あまり気分のいいものではない。
「けど、コールタール氏の動機は案外単純かもしれないよ?」と怪盗もどきが話し出した。
「話の中に出てきた息子さん…全部の騒動の発端になったわけだけど、別に親御さんと仲が悪いとかいうことはないんでしょ?意外と『子供の夢が詰まったものを、野蛮な輩に渡すわけにはいかない!』とか、そんなことを考えてたりしてね」
俺と化け狸はしばし黙考して、同時に「ほんとかあ??」と言った。いまいち信じられない我々の心は、思ったより荒んでいるのかもしれない。
怪盗もどきの当てずっぽうだから、外れているかもしれない。当たっているかもしれない。考えたところで真相がわかるわけもない。
だから、深く考えるのはなしにしよう。大金が手に入っただけでも万々歳だ。
さて、これからどうしようか。次の裏クエストが始まるまでまだ時間があるから、手持ち無沙汰ではある。
「お前ら、今回の報酬どうする?」
「川に落ちたせいで、高い一張羅が台無しさ。借金を差し引いた分で買い替えるよ」怪盗もどきが答えた。
「久々の大金だ。メギストリスのグランドパフェを1ダースドカ食いするぞ!」と化け狸が答えた。おえー。
怪盗もどきは、俺に「君はどうするんだい?」と聞いてきた。
「俺は全額、借金返済に充てる」と返すと、「えー!もったいな!」と残念そうな顔をした。
「仕方ねーだろーがよ!こちとら遊ぶ金欲しさに働いてる訳じゃねーんだ!」
ぐぅぅ、と絶妙なタイミングで腹の虫が鳴った。思えば、昨日の夕方から何も食べていない。
「…あー、諸君、将来の輝かしい投資を論ずるのもいいが、とりあえず目先の問題を解決するのが先だと思わないか?」
「同感」と、怪盗もどきと化け狸が答えた。
「じゃあ、飯食いに行くか!」
***
---まあ、こんな感じだ。馬鹿馬鹿しい裏クエストに首を突っ込み、汗水流して働いて、仕事仲間と馬鹿馬鹿しい会話を交わすのが、この頃の俺の日常だった。
誰かに「くそみたいな生活だ」と言われたって、俺はこういう日々を邁進するしかなかった。
割と嫌ではなかった。嫌になったらそのとき考える、と考えていた。
哀れに思うなら現金をくれ。さもなきゃとっとと帰れ。
有意義な時間も、馬鹿馬鹿しいことにかける時間も、ことごとくが俺の人生である。誰にも文句は言わせない。
あの日々を思い返す度、俺はそう固く思うのだ。
返済計画 進捗状況
3日(夜)~4日目 金策集計:
裏クエストクリア報酬 80万G
3日目(昼)時点の残金 250万9千3百G
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合計 330万9千3百G
7日目支払予定金額 500万G
目標金額までの残り 169万7百G
(続き・https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/127254852654/view/6389356/)