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自宅の菌類

アオマリモ

[アオマリモ]

キャラID
: RU977-303
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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アオマリモの冒険日誌

2023-10-15 23:29:52.0 2023-10-22 22:40:41.0テーマ:その他

街談機関 その7「勇魔跳梁」45


 「――――――――」

 「自分を悲劇の主人公みたく思い込んで、気に入らない連中をぶっ殺して回って――それでなんになる?
  自分で殺した死体に対して、『これは俺のせいじゃない!!俺の中の化け物が殺したんだ!!』なんて、一生言い訳して生きる気か?
  そんな勝手な言い分で、殺された側が納得するわけねえだろうが。卑しいぞ、お前」

 「――貴様」

 呪術王の顔が、徐々に怒りに染まっていく。
 そう。俺は徹頭徹尾、正論しか言ってない。裏クエストでせこい罪を積み上げてきた自分を棚に上げて、呪術王を糾弾している。
 慰めを求めるセンチメンタルな野郎に対して、正論を叩きつけることほど、心を傷つける所業はない。ましてや、その相手が無遠慮な部外者であれば、なおさら怒りは募る。
 使えるものは何でも使う。自分に対する他人の感情も、徹底的に利用する。これぞ、地獄を恐れぬ裏稼業人の業。

 「せめて、化け物やら魔王やらを気取るつもりならよぉ…自分の正義を振りかざせ。百人殺してお釣りが来るような野心を示せ。勝ち馬に乗る連中を熱狂させるような理想を掲げろ。
  ヒト様を薪みたく火にくべるってんなら、『だからお前は死ぬべきだ』っていう、根拠を示せ。奪う命の責任を負え。そうじゃなきゃお前、死ぬまでかっこ悪いまんまだぞ」

 俺は、腰に下げたはやぶさの剣を抜いて、呪術王に突きつける。これ以上ない、呪術王への宣戦布告。
 呪術王は、涙を流しながら、顔を真っ赤にしてこちらを睨む。
 まるで癇癪を起こしてだだをこねる子供のようだ――実際、そうなんだろう。年に対して、こいつはどこか幼い。

 「貴様、貴様、貴様ァ…!!!」

 「俺をとろかすような野望がねえってんなら――俺を殺そうとした責任、取らせんぞ。真っ向から、ぶち殺してやる」

 呪術王は、俺にろくに反論もできないまま、憤怒で顔をゆがめた。
 俺に対して、魔法使いのセオリーも何もなく、突進する気配を見せる――自分の配下のドラゴンを放っておいてだ。

 「もう、いい。黙れ、黙ってくれ…!!黙らないなら、貴様から、殺してやる!!!」

 もう、呪術王の罪もコンプレックスも何もない。シンプルに、小うるさい俺を殺しにかかるだろう。
 よぅし、と。俺は無表情で、内心でほくそ笑んだ。 あの沸騰具合ならば、呪術王が直接殴りかかってくるだろう。そうでなくとも、あれほど平静を失っていれば、まともにドラゴンを操れまい。
 この場で恐れるべきなのは、あのドラゴン『だけ』だ。ドラゴンと呪術王を上手いこと引き離せば、呪術王単体の処理はどうとでもなる。
 俺がやるべきは、呪術王を徹底的に挑発して、呪術王自ら俺と戦わせるよう仕向けること。そいつが成功した今、あとは単純な喧嘩勝負に勝つだけだ。
 俺は腰に下げた道具袋に手を伸ばし、戦闘態勢をとった。絶対に叩きのめしてやる!!

 ――そう、このときまでは全て、俺の思惑通りに事が運んだ。
 ただ、俺は別に凄腕の戦士でも軍師でもない。悲しいかな、戦さ素人の立てた戦略には、大抵穴があるものなのだ。

 ベキンッと。俺を殺すために呪術王が伸ばした左手の指がひとりでに、全て折れた。

 「………は?」

 俺と呪術王の声は、ほぼ同時に出た。呪術王は痛みも忘れて、突如骨折した左手を呆然と眺めた。
 俺は、ぶわっと湧きあがった悪寒に従い、あのドラゴンを見た。

 ドラゴンはモグモグと、肉を噛むように何もない空を咀嚼していた。
 ぎょこっ、と異形の音が響く。白目を剥いていた眼球が、視神経を考慮せずぐるりと回転した。その双眸が、眼下の俺と呪術王を見た。
 ――竜の目では、なかった。この世と断絶する異空間から噴き出した、底なしの闇のようだった。

 このとき俺のとった戦略に、明確な穴があるとすれば。この期に及んで、この紫色のドラゴンの底力を浅く見積もったことだ。
 あの生気の感じられないドラゴンが『自ら』、主である呪術王の支配を振り切る可能性を、俺は考えていなかったのである。
 そのツケは、すぐさま思い知らされることになる。

 『――マルタヲホロボセ』

 異形のドラゴンは、沼の泡が弾けるような不鮮明な声で、そう言った。

・続き:
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/127254852654/view/7622131/
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