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――〇月×日 土曜日 夕方十六時過ぎ。
カワキとの決闘が終わった後は、速やかに退去…とはいかなかった。
意識を失ったカワキをポポムたちに引き渡し、ついでに怪盗もどきと化け狸を預け、作戦の事後処理に巻き込まれ、仮面バスターに絞られ、例の赤い巨人に何か誉め言葉のようなものをもらったのは間違いないんだけど、ちょっと色々ありすぎて細かいことが思い出せない。対策チームの誰も彼もがせわしなく動き回り、オールドレンドア島の惨状の後片付けをしていく。
後片付けの合間、ちょっとした休憩を取れる瞬間があった。
すっかり白くなったレンガ街のガレキに座って水を飲んでいたときのこと。筋向いの建物の物影に、『影』が立っていた。
対策チームの誰かかと思って、なんとなくその影を見つめていると、不意に声が聞こえた。
『明日一日いっぱい、レンドア島倉庫で待つ。そこでゆっくり話そう』
走れ。ドラゴンを見つけた広場でそう言った、あの女の声と同じだった。がばっと身を起こした頃には、物陰からは誰もいなくなっていた。
俺は行き場のない怒りを落ち着けた後、ひとりごちた。
「……了解。首を洗って待っていろ」
誰も聞いていないはずなのに、ふ、と、誰かが笑ったような気がした。
――ポポムから作戦終了の通知があったのは、それから一時間後のことだった。
(その7・了 第4エピソード「勇魔跳梁」完了)
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