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自宅の菌類

アオマリモ

[アオマリモ]

キャラID
: RU977-303
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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アオマリモの冒険日誌

2024-07-14 20:08:13.0 2024-07-14 20:13:10.0テーマ:その他

街談機関 エピローグ「補講:キリンについて」8


 少女は答えなかった。どんなに辛くとも、変身することが生活の一部になってしまっていて、今さらやめようと思ってもやめられそうになかったからだ。だから、少女の身を案じるタリューの配慮にも答えられそうになかった。
 返答に窮するうちに、男の太股の熱で頭をとろかされるように、少女は睡魔に浸食されていった。枕にするには硬すぎて、睡眠に適しているとはとても言えないはずなのに、不思議なほど居心地がいい。眠るときすら気を張るのが当たり前だったのが、ここでは緊張の糸を張り巡らすことも難しくて、少女はあっさりと深い眠りに落ちていった。
 寝入りばな、頭上から「――いつか、その心の澱が溶けてなくなることを願っている」と、子供をあやすような声が聞こえたような気がした。

 ――その夜からほんの二、三ヶ月後。四人の旅路は唐突に終わりを告げた。タリューが死んだのだ。
 事の経緯は判然としない。一人、夜のグレンの町をふらふら散歩していたタリューが、たまたま通り魔のターゲットになったらしい。ナイフの刺しどころが悪かったのか、出血多量であっという間に死んでしまった。回復呪文を受け付けない身体が、ついにタリューの天命を見放したのだ。
 タリューの身体の弱さを考えれば、それはいつか起こったかもしれない事故だったが――これまでの旅路では、エレンやケチャといった旅仲間がトラブルをうまく防いでいた。
 その日不運だったのは、何かのきっかけで角の少女とタリューが大喧嘩をしたことだ。衝動的に宿を飛び出した少女をエレンが追い、連れ戻すのに手間取った。ケチャも別件で出かけていたため、誰一人タリューに付き添っていなかったのだ。
 三人が町の治療院に駆けつけた頃には、タリューはとっくの前にこと切れていた。

 ケチャはタリューの遺体の傍にうずくまり、声もなく泣いた。ずっと憧れていた先生が死んだからだ。
 エレンは激高して治療院を飛び出し、タリューを殺した通り魔を血眼で探したが、ついに捕まらなかった。日が昇った頃に治療院に戻ると、やはり友の死を悼んで泣いた。
 そして、角の少女はただ椅子に座って、日が昇るまで呆然とタリューの遺体を見つめていた。

 少女は、心の痛みや疲労に慣れ過ぎていた。心を半分もがれるような衝撃を受けようとも、涙を流すには至らない。
 その代わり、気付いたときには、少女の胸には孔が開いていた。

 タリューの膝元で過ごした夜も、タリューに思いを伝えて、静かに拒絶された涙も、全ては孔の中に消え去った。
 後に残ったのは、語るもおぞましい悪魔のような衝動だけだった。

 エレンとケチャが気付いた頃には、スルワラという少女は姿を消していた。
 二人は懸命にスルワラを探したが、町のどこを巡っても、その姿を見つけることはついぞなかった。

 そして、次にケチャがスルワラと再会したとき、彼女は既に暗殺者『キリン』に変貌していた。男に恋をした少女は、あの日確かに死んだのである。

 旅先で多くの友を得たタリューと違い、スルワラという親友との旅を語る者は、今となってはケチャとエレンしか残っていない。
 すべては、二十年以上も前に終わったことだ。

・続き:
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/127254852654/view/7871235/
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