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自宅の菌類

アオマリモ

[アオマリモ]

キャラID
: RU977-303
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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アオマリモの冒険日誌

2024-07-14 20:32:14.0 2024-07-14 20:37:44.0テーマ:その他

街談機関 エピローグ「補講:キリンについて」22


 ――身の内の毒を吐き切ったキリンは、内心穏やかだった。濁流のような呪いを受けたジャックは、血の気が引いていた。
 二人の決闘の明暗は、このときほぼほぼ決まったようなものだった。ジャックの未練は呪いの前に叩き潰され、晴れてキリンは自由の身になる。死んでいい身分になる。
 死にたいという、キリンの望みが叶うことが、この決闘の落着である。キリンはそのように思っていた。

 キリンの予想を裏切るものがあるとすれば。

「――仕方ないだろう。そう思っちまったんだから」

 それはジャックに、呪いを受けきる覚悟があったことだ。

 キリンの胸がドンッと押しのけられる。唯一自由だったジャックの右手が二人の間に挟まれ、小さな密室が引き裂かれる。

「歯ァ食いしばれ」

 脇を締め、手のひらを顔の前に。ジャブを打つように、ふいっと振り抜く。パシンッという乾いた音が響く。キリンの左頬に、ジャックの平手打ちが当たった音だった。

 キリンにとっては今さら、なんてことない一撃のはずだった。これまでの人生、もっと痛い攻撃ばかり受けてきた。そのはずなのに、これは。

 びりり、と紙を破くような音が響いた途端――しわの入ったキリンの顔に、ヒビが走り、仮面のように割れた。

***

「今のキリンは、不死身なのかもしれない」

 そんなとんでもないことを、ケチャは息子に向かって言った。
 ジャックとケチャの契約が成り、ケチャが『自身の知るキリンの全て』の情報を教えていたときのことだ。突拍子もないことを言い出す父に向かって、ジャックは胡散臭そうな目をした。

「……あー……真面目に言ってる?」

「冗談を言っているように見えるか?」

「見えないから聞いたんだけど……そうですか、不死身」

 ジャックは目頭を押さえ、大げさに天を仰ぎ見た。
 不死身。おとぎ話の魔王かなんかじゃなく、現実のヒトをそう称するケースは初めて見た。対策も何もかも馬鹿馬鹿しくなるフレーズである。
 ジャックは確かに、キリンという人物を『殺しても死ななさそうな超人』と認識しているが、本当に不死身の怪物であると思っていたわけではない。現実の話をしているそばで、そんな荒唐無稽な形容詞が飛び出してきたら、真面目に考える気も失せてしまう。しかも冗談ならいざ知らず、信頼できる情報源なら尚更である。

 オーバーな仕草で「もう何にも聞きたくありません」というジェスチャーをするジャックを、ケチャは静かに見ていた。冗談を言っている様子は微塵もない。そのあくまでも真面目くさった態度に、ジャックは否応なく毒気を抜かれてしまう。
 頭痛を無視し、居ずまいを正したジャックは、改めてケチャに質問した。

「聞きたくねえけど聞くよ。どういう根拠でそう思ったの?」

 ふすと鼻息を吐いたケチャは、回想するように目を閉じて話し出した。

「そもそもの発端は、実は他ならぬジャックのことだ。ある筋の情報で、君が連帯保証人絡みで大きな借金を背負い、ある借金取りの女に焚きつけられて、日夜後ろめたい仕事に励んでいる……ということを耳にした。ヴェリナード魔法戦士団を抜けた後の、君の状況を知ったのは、それが初めてのことだった。
 当時はまあ……色々驚いたし、失望もしたし、怒りもしたよ。今こうして落ち着き払って話ができるようになるまで、実は相当時間がかかったんだ。どんな理由があるにせよ、自分の子供が裏社会に入り浸っているということは、やっぱり悲しかった。
 そして、怒りはそのまま借金取りの女に向いた。未熟な息子を悪の道に引き込んだ、悪辣な犯罪者……ジャックの親として、一発殴ってやらないと気が済まなかった。
 その情報筋を締め上げて、その借金取り……メルトアの居場所を吐かせた後、僕は一人でその女に会いに行った。メルトアという女がどんな性悪な顔をしているかと思って、裏路地に入ってきた女の姿を睨んだら、知ってる顔がそこにはあった」

・続き:
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/127254852654/view/7871272/
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