キラマラ職人の朝は早いーー。
職人は4時間置きにアラームによって起こされる。眠い目を擦る暇もなく、布団に入ったままNintendo Switchを起動する。ブルーライトの光で目を覚ますのだ。
AとBボタンを交互に連打し画面を進め、目覚めし冒険者広場のワンタイムパスワードを打ち込む。
ログイン地点は、新エテーネの村のバザー前。チリンチリンと、配達ドラキーが昨夜バザーに流した商品の売り上げを報告する。これは、職人の持つ研ぎ澄まされた金銭設定が為す技である。まだ始めたばかりのものは、厳しい値段競争の中、価格を誤り、翌日になっても売れ残る。改めてキラキラマラソン界の厳しさを知ることになるだろう。職人は報告を見て頷くと、すぐに巡回地へと移動する。
雪の降り積もる洞窟。紅葉の彩る大地。かつてここで鉱石が採掘されたであろう採石場。木々の生い茂り陽射しを遮る樹林。屈強なモンスターがひしめく中を擦り抜け、ほのかに青白く輝く『ポイント』をへと進む。職人にとって、モンスターと戦わないことが流儀であり、迅速な仕事の秘訣なのだ。
キラキラには、自然保全のため4時間ごとに採取上限が定められている。これは天使界であっても変わりない。職人達は、それぞれが商材とするキラキラを上限40個まで採取し続ける。
採取を終え、新エテーネの村へと帰る。この村の取引商マルテーは、一世を風靡する商材、フォレース鉱石の取引商として最大手その人だ。
「売り上げはどうだい?」
「まあ、お陰様でね。」
幾度も繰り返す、決められたやり取り。職人と取引商は談笑もほどほどに、本題を切り出す。
「それで、今回は幾つ採取したんだい?」
「今回は初めてのケースだ。前回の比じゃないぜ。値段は…そうだな。最安値から10円…いや、1円引いてくれ。この時間帯なら、それでも売れるはずだ。」
「そうかい。毎度おおきに。」
気のない返事を聞き流し、職人は静かにログアウトする。キラキラ拾いの傍に、プライベートがあるのだ。また、4時間後彼は現れるだろう。フォレース鉱石を求めて。
今回のフォレース鉱石採取数ーー1個。