「…あー、帰ってきたー…」
「お疲れ様クロック、なの!」
メブキは、ベッドに倒れ込むクロックに声をかけたーー
皆さんこんにちわ、メブキはドラゴンの子供で、超天才技巧士の相棒なの!
錬金釜補修の依頼を終え、飛竜に乗ってメブキたちは家に帰ってきたの。っていうかメブキは乗ったって言えるの…?
クロックの家は飛竜からでしか行けない場所にあるの。
メブキもいつか大きくなって、クロックを背中に乗せるんだ!
「えー? メブキなんかに乗ったら重すぎて落ちちゃうよ。あ、メブキがね?」
クロックは今日も元気に毒舌なの。
「それにしても、ひっさしぶりだなあ…ここは」
「ずっと忙しくて来てなかったもんね。今日はゆっくり休むといいの。明日からドルワーム水晶宮でしょ? ほら、寝て寝て」
「あ、いや…やんなきゃ」
ムクリ、とクロックは起き上がる。
そのまま歩きだすと、水で囲まれた花壇に向かったの。
そして銀色に輝く白い花の前にひざまづくとーー
いつものおちゃらけた雰囲気を捨て、
腰に帯びていた剣を捧げたの…
まるで何かに祈るみたいに
まるで何かを弔うみたいに
クロックはここに来る度剣を捧げる。
「よし! 寝る! お休みー!」
そしてベッドにダイブすると、すぐに寝息をたて始めたの。
ーーずっと昔のことなの…
クロックはドワーフの冒険者で、冥王ネルゲル討伐を目指していたの。
メブキはその頃からクロックの相棒で、日中夜鍛練に励みついには討伐を果たした…。
そのあとレンダーシアに渡り、勇者の盟友になり。
弟の、形見を見つけた。
それがあの錬金釜なの。
手紙と共に輝く白い花ーーテンスの花を手に入れたクロックは、村を冥王に襲われた時別れた弟がもうこの世界にはいないことを悟り、戦うことをやめてしまったの…。
クロックは元は人間。
冥王に殺されたから、ドワーフの体を借りていただけ。
膨大な魔力を酷使して人間に戻ったクロックは、残りわずかな魔力を使い、メブキに声を与えたーー
だから、魔力が枯渇したクロックは魔技師に必要な魔法が使えなくなったの…。
クロックは微笑むの。
「もう、なにもいらない」
「およ、起こしちゃった? もう夜中だよ」
「眠れないだけなの」
その日の夜。
クロックの言葉は優しい。
「さーて、またしばらくここには来れないね」
「うん…」
「うわ、何シリアスになってるの? やめてよいきなりシリアスメブキ。」
「グスン」
「明日もーーよろしくね、メブキ」
「うん…クロック」
魔力を無くしたクロックに
メブキが初めて言葉を発したとき
クロックは作業をしながら返事をした
もう 守る人もいないから いいんだよ
メブキはそれ以来 ごめんね は言わなくなった
「ずっと側にいるの、ーークロック」
ーfin.