【Red Said】
キィとも音を立てず、扉は滑らかに開きました。
ここは月光の降り注ぐ楽園。
両親の愛よりもわたくしを育て、
幼いながらの神秘的な儀式をアズリアと二人
行った祭壇でもある、温室。
わたくしは、温室が我が家で一番のお気に入りでしたの。
二番は書斎、それからバルコニーでした…。
温室への出入りは自由です。お咎めする者もいませんので、幼い頃はいつも入り浸っていましたっけ。
外にはわたくし専用の、ローヌ産の揺り椅子がございまして、
そこでお昼寝するのも楽しみでしたの。
よく、心地よい夢を見たものです…。
アズリアと二人で走り回ったこともありましたの。
くたくたになるまで遊んだ懐かしい日。
ああ、ですが、
そのうち立派な淑女となるため束縛される今となってはもう…ただの夢!!
そういえば昔はよく、温室に
見覚えの無い樽があるときがありましたの…。
悩み事のあるときに限って現れる不思議な樽。
わたくしの秘密のお友達でしたの。
(アズリアはいつもタイミングが悪く、
一度も会ったことはございませんでしたの。
なんてもったいない!)
そろそろ皆が気づくやも。
さあ ついに出発ですの!