【Red Side】
あの後サーベントのお屋敷を出て、わたくしたちはセラーデ家の離れに向かいました。
家出…ではなくて冒険もまだまだ序盤ですの。
サーベントも、もちろんセラーデも誰もがわたくしたちの英断には気づいておりませんから、泊まりに行ったはずのアズリア嬢が忘れ物で戻ってきたことを苦も無く信じるのです。
わたくしたちがセラーデの家に来たのは、もちろん計画のうちですの。
忘れ物? とんでもありませんわ!
残りの荷物を取りに来たのです。
それに王都から離れるにはセラーデの方が近いですの。
あの子を待つ間、わたくしはこの離れでの思い出に馳せておりました。
あの子――アズリアは、病弱な子でしたの。
お母様の血を継いだのかしら。幼い頃から、本宅より王都から離れたこの屋敷で、遊び相手もわたくしだけ……
哀れに思う反面、羨ましくもありました。
アズリアは本が好きで、尊像力に恵まれた豊かな子。
対してわたくしは…
本を一冊持っていきたいと言ったとき、なんてこの子らしい!と思いましたの。
さあ、戻ってくる前に行き先を決めてしまいましょう。
どこなら見つからない? 長く逃げおおせられる?
――知ったことではありませんわ!
わたくしは思いっきりさいころをブン投げましたの!
落ちた先がどこでも。どこへでも。
ゆきますわ。
自由のために!