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ガオー牙王

イッキュウ

[イッキュウ]

キャラID
: MO364-367
種 族
: エルフ
性 別
: 男
職 業
: 遊び人
レベル
: 136

ライブカメラ画像

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イッキュウの冒険日誌

2025-10-13 10:01:53.0 テーマ:その他

光を継ぐ者達 第四章 断罪の因果 第五話 抗えない温もり

第五話 抗えない温もり

 夜更け。
 囲炉裏の火が細く揺れ、家の中に柔らかな影を落としていた。

 布団に入ったティナが、半分眠りに落ちそうな声で囁く。
「ねえ……お兄ちゃん」
「ん?」
「夢を見たの。光る斧を振って、いっぱいの魔物を追い払う人の夢」

 リクは思わず息をのむ。
 ティナは目を輝かせながら続けた。

「その人ね、すっごく強くて、すっごく優しくて……なんだか、お兄ちゃんに似てた」

 胸の奥に鋭い痛みが走る。
 村が無惨に焼かれ、命を落としたティナの姿が、鮮烈に蘇る。

「……そうか」
 絞り出すように答え、リクはティナの髪をそっと撫でた。
 震えそうになる指先を、必死に抑えながら。

「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだい?」
「私ね……お兄ちゃんがいるだけで安心なんだ。だから……どこにも行かないでね」

 その言葉は甘えるように優しく、けれど刃のようにリクの胸を抉った。

「……ああ。ずっと一緒にいるよ」

 叶わぬ約束と知りながら、リクはそう答えるしかなかった。

 ティナは安堵したように微笑み、リクの腕に小さな体を預ける。

「えへへ……お兄ちゃんは、私の光の戦士だから」

 やがて彼女は静かな寝息を立て始める。
 リクは涙をこらえきれず、眠る妹を抱きしめた。
 こんな日々が、どうして守れなかったのか――その悔恨だけが、彼を押し潰していった。

 ***

 リクは一晩中、ティナの寝顔を見守っていた。小さな胸が規則正しく上下するたびに、胸の奥に温かいものと、言いようのない恐怖とが入り混じる。
 幻かもしれないと頭のどこかで理解しても、妹の体温だけはどうしても否定できなかった。
 二度と失いたくない――その願いが、彼を縛りつける。

 翌朝、まだ陽が昇りきらぬ頃。リクはそっと立ち上がり、ティナを起こさぬように足音を殺して家を出た。村はまだ朝霧に包まれており、空気は冷たい。

 彼が向かったのは村の奥にある小さな祭壇だった。 そこには一本の古びた斧が祀られている。
 かつて「閃光の斧」と呼ばれたそれは、もはや輝きを失い、刃は錆びつき、柄も朽ちかけていた。

 リクは祭壇の前に立ち尽くし、拳を強く握った。
 ――この村を襲うかもしれない未来。
 ――無惨に命を奪われたティナの姿。

「……避けられないのか」
 呟いた声はかすれ、霧の中に消えていく。

 そのときだった。村の入り口のほうから、何やら騒がしい声が響いてきた。
 リクは反射的に物陰へ身を潜め、目をやる。

 そこには、一人の女性が立っていた。
 長く艶やかな黒髪、凛とした気配を漂わせた美しい姿。
 村人たちと穏やかに言葉を交わすその横顔だけが、霧に揺らめかず鮮明で、まるで別の世界から切り取られたかのように見えた。

「……セリア……!」

 見間違えるはずもない。彼の仲間、共に戦っているはずの少女が、そこにいた。

 しかし同時に、リクは理解した。
 セリアの出現は、この「平穏」が終わりを告げる兆しにほかならないということを。

 胸の奥に走るざわめきと共に、リクは息を呑んだ。 もう、時間の猶予は残されていない――それでも、眠る妹の笑顔が脳裏に焼き付き、足はその場から動けなかった。
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