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ガオー牙王

イッキュウ

[イッキュウ]

キャラID
: MO364-367
種 族
: エルフ
性 別
: 男
職 業
: 遊び人
レベル
: 136

ライブカメラ画像

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イッキュウの冒険日誌

2025-10-13 10:20:34.0 テーマ:その他

光を継ぐ者達 第四章 断罪の因果 第八話 決別

第八話 決別

 村のはずれ、夕暮れの中で――
 セリアはリクを見つめていた。
 穏やかな風が吹き、遠くで子供達の笑い声が響く。 けれど、この世界の空気には、どこか“止まった時間”の匂いがあった。

「……セリア?」
 リクの瞳が驚きと混乱に揺れる。
 彼の背には、小さな妹――ティナが寄り添っている
 その姿に、セリアの胸は締め付けられる。

「リク。落ち着いて聞いて」

 セリアは一歩、彼に近づいた。
「ここは……時の狭間。
 ハーゼルの禁術《時幻牢(じげんろう)》によって、あなたの魂が飛ばされた“あり得たかもしれない過去の世界”よ」

 リクは息を呑む。
 理解が追いつかない。
 いや、理解したくなかった。

「そんな訳ない!」
 怒号が響く。
「見てよ、セリア! ティナは生きてる!村だって!みんな、生きてるじゃないか!」
 その声は震えていた。
 信じたい。信じていたい。
 たとえこの世界が幻でも――この温もりを、手放したくなかった。

「リク……ここは魂だけの世界なの。あなたの“もしも”が形を取った幻――」
「そんなわけあるもんか!!」
 リクは叫び、ティナを庇うように一歩後ずさる。
 その姿は、絶望に縋る人間そのものだった。

「お兄ちゃん、大丈夫? この人、誰?」
 ティナが不安そうに見上げる。
 リクは優しく微笑んで答えた。
「大丈夫だよ、ティナ、君は僕が守るから」

 そして踵を返し、セリアから離れようとする。
 その背を、セリアは必死に呼び止めた。
 「待って!!」

 彼女の声が、村の静寂を切り裂いた。
「今、現実の私たちの肉体を――バロムが命懸けで守ってるの!
 もしこのまま戻らなければ、肉体が滅びて……私たちの魂は永遠に帰れなくなる!
 バロムだって……一人じゃ長くは持たないわ!」

 セリアの顔に、悲痛な影が差す。
 「バロムが……」
 リクの表情に動揺が走る。
 仲間の名が、かすかな理性の光を呼び覚ます――。 だが、その瞬間。

 空が裂けた。
 黒い霧が村を覆い、世界が不気味に軋んだ。
 風が止まり、空気が重く淀む。
 やがて、暗雲の中から“それ”が姿を現す。

 巨大な魔獣。
 全身に骨の鎧を纏った骸の獣――。
 空から産み落とされるように、闇が地に墜ちた。

 「――あれは……!」
 二人の脳裏を閃光のように走る記憶。
 炎に包まれた村、崩れる家々、絶叫する村人、そして――ティナの、最期。

 「行かなきゃ!!」
 セリアは盾を背に、駆け出そうとする。
 だが、リクの手が彼女の腕を掴んだ。

 「待って!」
 振り返るセリアに、リクは唇を噛みしめながら言った。
「君の言うことが本当なら……君はバロムのところに戻ってあげてよ。
 村は……もう、諦めるしかない」

 その言葉は、諦めというより――懺悔のようだった
 自分を責め、過去を恐れ、未来を見失った男の声。
 セリアの瞳に、涙が滲む。
 ゆっくりと振り返り――
 次の瞬間、乾いた音が響いた。

 パシン!

 セリアの手のひらが、リクの頬を打った。

 「……あなたは、誰!?」
 怒りではなかった。悲しみでもなかった。
 魂を揺さぶるような、叫びに近い言葉だった。

 リクは頬を押さえ、ただ呆然とセリアを見つめる。 その瞳に、初めて“迷い”が映った。

 「もういいわ」
 セリアは涙を拭い、静かに背を向けた。
 「私の知っているリクは、ここにはいなかった……  私は……一人で戦う!」

 盾の紋章が光を放つ。
 セリアは村へ向かって駆け出した。
 燃え上がる幻の空の下、ただ一人。

 リクはその背を見送るしかなかった。
 罪悪感、恐怖、そして妹への想い。
 それらが絡み合い、彼の足を縛りつける。

 「……セリア……」
 その名を呼んでも、返事はなかった。

 やがて、黒い炎が空を焦がし、村の鐘が鳴り響いた
 その音は、まるで――魂の牢獄を打ち鳴らす鐘の音のようだった。
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