レニィアーゼの冒険日誌

チェルに季節イベントに行こうと誘われる
正直　乗り気ではなかった
ボッチの人間が季節イベントに
良い思い出があるわけがない

なんでボッチかって？
昼から深夜の３時までインしている僕は
人から見たらヤバいやつだろう

だからって精神障害者で
こんな生活をしていると
いちいち説明して周るのも面倒だ
精神障害と聞くだけで
ドン引きされるだろうし

だから人付き合いは希薄にしていた

深く付き合って居るのは
同じ境遇の精神障害者である
チェルくらいか

グレン城下町で待ち合わせする

ゆかた姿で現れたチェル

「いつもの恰好じゃないんだな」
「そっちは
　いつもの恰好ね？」

少しばかり不満そうだ
しかたなく
こちらも
それらしい格好にすることにした


七夕イベント

「あんずアメ食べたいでしょ
　あと射的もやりたいさ
　水風船釣りたいし
　あとは　あとは」
「そこまで
　できればいいんだけどな」

今じゃ説明しないと
わからないレシピが売って居るのと
お面と花火くらいだろうか

リアルの七夕祭りと比べたら
おかしなものだが
正直　物足りなさは感じる

「リアルの七夕祭りは行かないのか？」
「・・・」

聞いて直ぐに後悔した

「・・・倒れたら
　・・・どうするの？」

そうだよ
この答えが返って来るのは
わかってたはずなのに

街に出かけたら必ず倒れるだろう
僕らは　そんな身体だ
倒れられるなら外で倒れるのと
家で倒れるの
家族には　どっちが負担にならない？
だから出かけることはできない

だから家でドラクエ１０してるしか
そのくらいしか娯楽は無い

「聞いたら悪いとは
　思って居たが」

気を使って聞かないのも
何か悪い気がしてしまった

「お互い
　普通の事ができないね？」

なぜだろう？
その言葉に悲しみの色は無かった

「あ　肝試しがあるみたいだよ
　行ってみようよ？」
「一人で行けよ」
「一人で行って何が楽しいのさ？」
「・・・」
「あ・・怖いんだね」
「怖いわけねえだろ」

その後　ヴュアの悲鳴しか
聞こえなくなった
それを見て面白く笑うチェル

小学生の子供は嬉々として楽しんでいるのに
大の大人は悲鳴を上げて怯えている

「ここなら大丈夫だよ」

安全地点という場所でも呼ぶべきか
そこで座り込む二人

「・・・よく
　こんなの楽しめるな」
「そうだね　最近たのしいよ」
「最近？」
「インしても
　誰も遊んでくれる人
　居なかったから」

昼の１２時から深夜の３時まで
遊んでくれるような相手が
どこに居る？
居たとしたら似たような境遇の
人間だけか
僕は　それに該当した

「昼に起きてヴュアに声をかけて
　一緒に遊んで
　独りじゃないって感じられてさ」

それは僕にとっても同じだった

「くだらないことで笑って
　一緒にストーリー楽しめて
　夜　眠くなるまで遊んでくれて」

それは僕にとっても同じ

「早く眠って起きて
　ヴュアと遊びたいなって思う」

それは僕にとっても同じ

昼にインしたって遊んでくれる相手が
どこに居る？
深夜３時までインしてて
気持ち悪がらない相手が
どこに居る？

精神障害って事情がわかって
遊んでくれる相手が　どこに居る

「ねえ　聞いてる？」

ここに居るじゃないか

「楽しいって感じる心を
　何年か振りに取り戻せたよ」
「私も」

七夕祭りの会場で
しぐさでポーズをとって
写真を撮った

「楽しかった」
「あぁ　僕もだよ」
「あ　そうだ
　今度　お母さんが
　ヴュアに会いたいって」
「え？」
「話があるみたいだよ」
「・・・」
「じゃあ
　またお昼にね」

ログアウトしたチェル

「・・・」

・・・会いたくねぇ