本日誌は自キャラレオナルドの参加させて頂いたJC蒼天のソウラ、『真の太陽』戦士団ネタの二次創作です。勝手ながら戦士団の皆様のキャラクターを使用させて頂いております。イメージと異なる部分ありましたら申し訳ありません。また、時間設定諸々にワッサンボンさんの二次創作作品『―100―』を引用させて頂いておりますので、あわせてお読み頂けると嬉しいです。また、蒼天のソウラRPG編のネタバレも含みますので、14巻までは読了頂いたうえでお読みください。
『旅立つ日』
(まただ…また間違えた)
崖の下、動かない体でレオナルドは天を仰ぐ。
辛うじて目線を動かし、遠くに転がる得物を確認する。
長らく戦場を共にした相棒、アンフィスバエナの握り部分に大きな亀裂が走っていた。
(体は動かない…武器も壊れた…最悪だ…所詮、モンスターなんて放っておけば良かったか…いや…そもそも一人で出なければ…)
体の痛みよりも、後悔がぐるぐると脳裏をめぐる。
霞む意識で、レオナルドは今朝のやり取りをぼんやりと思い出していた。
「っしゃあぁぁぁ!」
木と竹のぶつかり合う甲高い音が、ルシナ村の波打ち際に幾度となく鳴り響く。
かつて真の太陽と呼ばれた戦士団の一人、ムジョウの振るう、木刀というよりはむしろ丸太に近いソレを、レオナルドは竹槍でいなしていく。
考え無しの大振りに見えるムジョウの攻撃だが、狙いをそらされた斬撃はしかして地を抉る事は一度もなく、そもそもそらされる前提、驚異的な筋力で軌道を変えて次の攻撃へと繋がっていく為、レオナルドは防戦に徹している。
「だっ、くっそぅ!またか!」
不毛な打ち合いは永遠に続くかと思われたが、唐突に終わりを告げた。
2人は手合わせの時間を30分と決めている。
いつまでも決着がつかないからだ。
朝食後から始まり昼ご飯を過ぎて晩の宴も踏み抜いて、セレン姐さんの逆鱗に触れて以降の決まり事だった。
これ見よがしに二人の大好物のオンパレードを三日三晩、目の前で仲間たちにだけ振る舞われ、その間、毎食メザシと白米のみ(とはいえ、それも滅茶苦茶に美味しかったのだが)で過ごすという拷問を受けては、大人しく従う他にない。
「お疲れ」
レオナルドは竹槍を小脇に抱えると、空いた手を汗だくで座り込むムジョウに差し伸べる。
「それは弓使いから一本獲れない突撃隊長に対する嫌味か?」
「とんでもない。こっちだって捌くので手一杯なんだ」
「…どうだかな」
そもそもを話せば、レオナルドは戦士団に加わるまで槍を主な得物にしていた。
しかし槍を使うにせよ得意なのは防戦であり、ムジョウや、らとらたを筆頭に、前衛メンバーの充実している戦士団において、ハじメやくさなぎのように作戦立案に長けているわけでもないとなれば、中衛として全体を支えるポジションをとろう。
そう考えて戦士団では弓をとった。
弓に持ち替えてもそれなりに様になるのは、ひとえに育ての親のスパルタ教育の賜物だ。
『鷹の目を持て。戦場を俯瞰し、仲間を守り、軍師の作戦を一切の綻びなく進行させる事が、弓使いの役割だ』
というのが弓使いだった養父の持論である。
自惚れるわけでもなく、レオナルドの弓の腕前は当時の仲間たちの中でも、頭一つ抜けていた。
だが、養父はその生涯において、けして戦場でレオナルドが弓を持つことを許可することは無かった。
にもかかわらず、養父は形見として自身の弓と、必殺の仕掛け矢『双頭蛇』のタネを託してくれた。
だからこそレオナルドは、戦士団で弓を握るにあたり養父の言葉を常に意識した。
…つもりだった。先陣の背を狙う敵に注視し、回復職や補助職の護衛に回り、その本分を全うしようとした。
だがしかし、レイダメテスの墜ちたあの日。
レオナルドが戦場に駆けつけた時には、事態はもう、収拾のつかない状態になっていた。
団長の思惑、副団長の想い、不穏な気配。
すべてをうっすらと感じつつも、俯瞰でなく傍観し、放置した。
その帰結。
あの日の後悔は、また一つ消えぬ火種となってレオナルドの心に燻ぶっている。
「あ!いたいた!!お~い!」
「お~い!!」
陰鬱な思いに沈みそうなところへ、明るい声が飛び込んできた。
イヌネコのように四足で駆けてくる2人組。
カタギリとねこがみさんだ。
「あのねあのね、大変なの!」
「そうなのそうなの!魔物がね!村の外にね!!」
「「わ~って!!」」
2人なりに必死に緊急事態を伝えているはずなのだが、この妙な緊張感の無さは何だろう。
瞠目するムジョウとレオナルドであった。
続く