「居た居たっ!」
あやうくハクト達のいる階層を通り過ぎそうになった所で、アカックブレイブのド派手な色彩が目に留まり、ギリギリ床を掴みよじ登る。セ~クスィ~から受けた魔装の手ほどきはあともう一つ。実際、魔装の力はそこまで大それたものではなく、使用者の1~2割ほど底上げする程度のもので、あとは勇気とドルセリンの力で何とかするのだという事。勇気はともかくドルセリンがどのように身体に作用するのか、セ~クスィ~の説明に一抹の不安を覚えたティードであったが、実際かなり身のこなしが軽くなったのを感じていた。
「ちょっとアカックブレイブ。ちゃんと打ち合わせしといてもらわないと」
「ああ、すまないハハックブレイブ」
「ええ?勝手に名前付けてるし…。まあいいけどさ。さて、ハクト」
「はっ、はい!」
ティードはハクトに歩み寄ると、間髪入れず、その頬を叩いた。
「おう、魔装をつけたままビンタとは…」
小声でつぶやき思わず自分の頬をおさえハクトの痛みを想像するセ~クスィ~。可愛そうだとは思うが、これは親子の問題だ。口出しするまいと口をつぐむ。ハクトもまた、ティードの愛ゆえの行動を甘んじて受け入れた。
「ハクト。友達を思っての行動をだから、これぐらいで済ませてあげる」
そしてティードは頬を赤く腫らした息子を、ぎゅっと強く抱きしめる。
「私もマーちゃんも、あなたから見れば、随分な無茶をする事があるし、これまで何度もそういう場面を見てきたと思う」
ハクトはその言葉に、ヴェリナードで巨大人型兵器、フィズルガーZと戦いボロボロになった父を思い出した。
「でもそれは、その行動に、自分で責任を持つことができるからよ。ハクギンの事、納得がいかなかったことはわかる。でもね、セ~クスィ~がいてくれなかったら、今頃あなたはどうなっていたか…」
ハクトからティードの表情は見えない。だが、声と体の震えから、母がどれだけ心配してくれたのか、そして、自分を愛してくれているのかが、まさしく痛いほどに伝わってきた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、母さん」
ギュッと強く、ティードを抱きしめ返すハクト。
「良かった、本当に良かった」
その光景を、ズビズビと鼻水と涙を流しながら見つめるアカックブレイブ。
「…あの、ちょっと、手伝って欲しいかなって思うんですが」
親子の感動の再開の間、予期せぬ侵入者と反乱者への対処の為に、とめどなく送り込まれてくるSBシリーズを一人で何とか抑え込んでいたハクギンブレイブからお声がかかる。
「なんて無粋な輩だ。ダイダイックから聞いてはいたが、本当に最近の悪党はまったく礼儀がなってない!!」
ダンッと地を蹴りハクトの拘束されていた手術台を飛び越えて、そのまま正面の偽ドルブレイブに拳を打ち込むアカックブレイブ。てっきり防がれると思っていたが、あっさりと拳は胴体を貫通し、敵はゆっくりと倒れ伏した。
「むっ?」
「こいつらは多分、急ごしらえで戦闘データのリンクが済んでないんです」
「なるほど。なら二人で充分だな。背中は任せた。蹴散らすぞ、ハクギンブレイブ!」
「はい!!」
ハクギンブレイブとアカックブレイブを取り囲むように配置につく残る6体の偽ドルブレイブに対し、背中を合わせて構えをとる。数の不利を物ともせず、そこからの戦いは一方的なものとなり、あっという間に大量の偽ドルブレイブをスクラップにした二人であった。
続く