「ハクト、皆も、外まであともう少しだから、頑張って」
お互いにまだ幼い子供を背負いつつ、攫われていた子供たちを先導して研究所の中を進む。幸い、牢屋からこれまで、敵の妨害は無い。散発的に響いてくる地下からの振動がハクトの不安を誘うが、逆に言えば戦闘の音が響いているということは未だアカックとハハックが無事な証拠でもある。健康状態が思わしくない子供も少なくない。急ぐことができないもどかしさをグッと飲み込み、無機質な廊下をひたすら進む。
「な、何だお前達は!?」
「わわっ、怪しいものじゃないです!」
本来は大型の設備を運び入れるための、極秘のハッチ。岩肌に偽装した扉から外へ出ると、グレン城の兵士と遭遇した。とっさに槍を向けられ、慌ててヘルメットを脱ぐハクト。
「君たちは一体…」
「あ~、えっと…連絡が行ってませんか?僕たちは超駆動戦隊ドルブレイブ、ただ今救助活動中の真っ最中です。攫われていた子供たちを救出したところで…」(わぁぁぁっ、何言っちゃってるの僕、信用してもらえないよね、まだ子供だもの…)
あながちウソではないのだが、苦し紛れの方便に冷や汗が出る思いのハクト。
「おお、ちょうど我々も、アカックブレイブ殿からの連絡で怪我人の救助に駆け付けた所なのだ。失礼した、まだ君たちは大変幼く見えるが、一角の戦士なのだな。…任務、ご苦労様であります!」
そのままグレン兵から話を聞くに、アカックブレイブは先般、ドルブレイドを走らせながら、小型通信端末を用いてダイダイックブレイブの救助をグレン城に要請していたようだ。ダイダイックを回収した部隊は既にグレンへ向け出立、残る彼らはドルブレイドの走行痕を辿って、他の要救助者がいないか、確認を行っていたらしい。後方に、彼らの乗ってきた幌馬車が見える。救助した子供たちを全員乗せてもらうことができそうだ。外へ出られ、緊張の糸が切れてしまったのだろう。すっかり腰の抜けてしまった子供たちを支え、馬車へと乗り込ませるハクトとハクギンブレイブ。
「では、子供たちを安全な所までお願いします」
「君たちはどうするんだ?」
「「僕らにはまだ、やることがありますから」」
ハクトとハクギンブレイブの力強い言葉と眼差しに、事情は分からないながら、何かを感じ取ったグレン兵。
「承知した。ご武運を祈る」
遠ざかる馬車が吹雪で見えなくなった辺りで、ドルセリン切れによりハクギンブレイブの変身が解除された。ハクトのスーツもまた、ギガボンバーの爆発エネルギーを利用している。手持ちのギガボンバーの残数を考え、スーツを一時解除した。
「さぁ、アカックと母さ、じゃなかった、ええと、ハハックを助けに戻ろう」
「うん。できる限り、ドルセリンは温存したい。ギリギリまで展開はさけて…」
その時、ハクギンの言葉を遮る様に、ひときわ激しい地響きとともに地面が隆起した。巻き上がる瓦礫の中は、アカックとハハックの姿が。
「アカック!?」
「母さん!?」
空高く舞い上がり、地に打ち付けられる2人。許容量を超えるダメージに、魔装展開が解除される。ハクトとハクギンは慌てて二人に駆け寄った。
「ああ、ハクギン、ハクト君、無事なようで何よりだ。囚われていた子供たちは?」
「ええ、大丈夫です。グレン城の人たちに預けました。それよりも早く手当てを…」
「母さん、しっかり!」
「大丈夫、大丈夫よハクト」
地に打ち付けられたダメージだけではない。いかに魔装と言えど、敵の攻撃を受け止めきれなかったのだろう。セ~クスィ~のティードの体には無数の傷が刻まれている。それぞれにハクトとハクギンの支えを借りて、ようやく立ち上がった所で、先ごろぽっかりと空いた地面の穴から、青い腕が飛び出してきた。がっしりと踏みしめるように地面を掴み、その巨躯を引きずり上げるように地下より這い出してくる。
「うそ…なんだか…大きくなってる?」
ハクトの感じたとおり、シドーレオは産声を上げた先頃より一回りその身体を大きくし、何より異質な右上腕がより太ましく変容を遂げていた。
「無茶はするなと言った矢先であれだけど、力を借りるわよ、ハクト、ハクギン」
より禍々しさを増した敵を前にして、満身創痍ながらもセ~クスィ~とティードの目は、まったく陰りを見せていなかった。
「ああ、やはり2人という人数では、戦隊の構成要綱を満たなくてな。どうにも力が出ない。無論、ただの数合わせではないぞ。大いに頼りにしている」
正直、恐怖はある。だが、ハクトにもハクギンにも、ためらいは無かった。
「今日は私と君たちで、超駆動戦隊ドルブレイブ、アッセンブルだ!!」
続く