※本作はDQXならびにJC『蒼天のソウラ』の設定をベースとして、私個人の独自解釈で作成させて頂いた二次創作のお話となります。
オリジナル設定、拡大解釈等、無理がある部分も温かい気持ちで飲み込んで頂ければ幸いです。
また、私の冒険日誌にある過去作品『マージンの一番長い日』、『着せ替え狂想曲』、『ドルブレイブ・アッセンブル!』との続きのお話となりますので、よろしければ合わせて御目通しくださいませ。
『幻列車の浪漫』
月明かりの差し込む仄暗い部屋の中、束ね上げた髪を揺らし、一人のオーガ女性が歌に合わせてダンスを踊っている。
「ふぅ、今のが一番良かったかな」
踊り終えた女性は、顎に人差し指を当てると、瞳を閉じて耳に残る自分の歌声を反芻する。
額の汗を首にかけたタオルで拭うと、ごく少量のさえずりの蜜を垂らしたぬるま湯で、酷使した喉を潤した。
時刻は丑三つ時。
アイドルたるもの、日々の体調ケアが欠かせない。
夜更かしなどもってのほかではあるのだが、彼女、テルルの所属するインターコンチネンタルアイドルユニット、ExtEのグランドタイタス号を貸し切っての単独ライブを間近に控え、ついつい練習に熱が入ってしまった。
もとはと言えば、海底離宮攻略の為集まった100人の中から、楽才に秀でた冒険者を集めて急増されたユニットが、クエストの後も縁に結ばれ、遂には世界の大舞台に立つ。
否が応でも、気合が入るというものだ。
さっとシャワーで汗を流し、眠りに就こうと思ったその時、テルルは何気なく目を向けたマイタウンのプライベートビーチにて、信じられない光景を目にした。
「えっ?スワンちゃんが…動いてる!?」
「おいマー…じゃなかった、M」
「なんだH」
「これは本当に人助けの為なんだよな?」
暗闇の中、波打ち際に設置されていたテルル所蔵のスワンボートを担ぐ黒ずくめの男が二人。
いかに冒険者と言えども、はるかに身の丈を上回る庭具は流石にすんなりとは運べない。
さらには人間とエルフという、二人の種族の違いゆえの身長差もまた、運搬作業を困難にしていた。
「お互いまったく知らない仲じゃないんだ、素直に頼めばよかったんじゃないか?」
「我らが大棟梁は前進翼とジェットエンジンを付けるつもりなんだぞ?許可が出るわけないだろ」
「…なおの事不安になってきたんだが。留置所行きはもう勘弁だぞ」
「すべてが終わったら、またこっそり返すさ」
「前進翼とジェットエンジン取り付けちゃったら、コッソリもクソもないだろう…」
Mことマージンと、その相棒であるHことエルフのフツキ。
彼らは今、とある事情から、人の想いが強くこめられた小さな乗り物を探しており、テルルにとってはまことに災難ながら、密かに白羽の矢を立てられてしまったのだった。
続く