「あのハクギンって子はその辺分かっているようだが、あの子達はな…」
理解できようはずもない。
そしてまた、年端もいかない子供に、自らが死んでいることを告げれようものか。
そして、屈託のない笑顔を浮かべ、アジロ、ソワレとの再会を喜ぶテルルにもまた、それは同様であった。
神妙な面持ちで俯き、黙り込む3人。
「ねぇおっちゃん」
「!!?」
放っておけば永遠に続きそうな沈黙を破ったのは、ちょいちょいとロマンのズボンを引っ張るアジロだった。
「おおおおおっ!?どうした少年!?」
先の話を聞かれてはいないだろうが、あからさまに動揺してしまうロマン。
「ソワレはテルル姉ちゃんにうたの稽古してもらってるから、ひま」
自身もまだ幼いながら、妹の邪魔にはならぬよう配慮し、そっと離れてきたのだろう。
「ねぇ、ソワレは大きくなったら、テルル姉ちゃんみたいな歌手になるんだって」
よいしょっとマージンとロマンの間に体育座りで陣取るアジロ。
「でもオイラ、ソワレと違って将来どうしたらいいかわかんないんだ」
色んな意味で返答に詰まる3人を余所に、あくまで真摯にアジロは問いかける。
「おっちゃん達は、どんな仕事してるの?」
「まず、お兄さん、な。オレはマージン。よろしくな」
「よろしく、おっちゃん」
わかってやってるのかいないのか。
差し出された大人の手と固い握手を交わしながら、さらっと喧嘩を売るアジロ。
「まぁ、よしとしよう…。オレは大人だからな…!」
大人げの無い憤りは押し込み、マージンはなんとか快活に答える。
「オレの職業はな、爆弾工作員(ボム・スペシャリスト)だ!爆弾の事なら何でもお任せあれ、の凄いお兄さんなんだぜ!」
「あ、そういうの知ってる。先生から聞いたことあるよ。『きけんじんぶつ』って奴だ」
「ホワッツ!?」
無邪気な子供の言葉に、軽くノックアウトされるマージンであった。
「何やってんだよ…」
「少しほっといてくれ…」
影を纏って四つん這いにうずくまるマージンを置いて、今度はロマンのターンが回ってくる。
「よろしくな、坊主。俺っちはロマンってモンだ!アストルティア随一の大工、大棟梁と呼んでくれ!」
「…だいく?それって何をするお仕事なの?」
「大工を知らねぇってか。坊主、お前さん、人生だいぶ損してるぞ。大工ってのはなぁ…」
「あ、思い出した!あれでしょ、家建てたりするんでしょ?」
「おう、間違っちゃいない」
「地味だよね」
「はっ…!?」
再び大人の心に突き刺さる無邪気な言葉のナイフ。
「ホント何やってんのよあんた達…」
三白眼で呆れて見下ろすマユミの目線の先で、マージンに仲良く横並びで蹲るロマンであった。
続く