「おおおおおおッ!!」
ハクギンブレイブの雄叫びを載せて、強烈な右ストレートパンチを繰り出すドルセリオンブロス。
ギガントナイトメーアの巨体が嘘のように宙を舞い、地面に叩き付けられる。
「よし!!トドメをさすのよハクギンブレイブ!ドルセリンキャノン、スタンバイ!薙ぎ払えっ!!!」
そしてもはやテンションだけで叫ぶマユミ。
「あ、えっと?ドルセリンキャノン、スタンバイ?」困惑するハクギンブレイブにつられて、とりあえず何となく砲を構えるポーズをとるドルセリオンブロスであったが…。
「な~に遊んどるんじゃ!!」
幻のドルセリンキャノンの代わりに、ロマンのデコピンがマユミに炸裂する。
「ハクギンブレイブも、冷静になれ!そんな武器は、無い!!」
「えっ、無いんですか!?」
ドルセリオンブロスは項垂れ、その全身の動きで雄弁にハクギンブレイブの落胆を表現している。
「君もあれか!?実はポンコツ組か!?」
そうこうしているうちに、倒れた姿勢のギガントナイトメーアから再び無数のゆめにゅうどうミサイルが放たれる。
「…やれやれだ」
一連の寸劇を見守っていたレオナルドだが、嘆息するとドルセリオンブロスの左肩に飛び乗り、矢を撃ち放って迎撃した。
その間にギガントナイトメーアも立ち上がり、ドルセリオンブロスに向き直る。
しばしの膠着ののち、ギガントナイトメーアは唐突に構えを解いて語りだす。
「力業はやめたやめた。面倒くさい。あとたった3人。何も眠らせるだけが能じゃないんだよ。心を折ってやればいいのさ。…先に手堅く2人分、魂を頂戴するとしようか」
ギガントナイトメーアの滑るような不気味な視線は、歌い続けるソワレと、ドルセリオンの玩具を抱き締めるアジロに絡み付いていた。
「そこの娘。これくらいなら、心を覗かなくともわかる。お前は将来、歌手になりたいんだねぇ?でもざ~んねん。なれはしないよぉ!お前の兄貴も同じさ、夢を見たとこで、どうにもなりはしない」
ギガントナイトメーアの挑発するような言葉に、テルルの方がブチ切れる。
「何言ってくれてんのよ、このぬいぐるみの出来損ないが!」
眠気覚しの歌唱はソワレに任せ、雄叫びをあげるテルル。
しかしテルルの事は、ギガントナイトメーアの眼中に全くない。
「…だってお前たちは」
本当に楽しそうな笑みを浮かべて、ギガントナイトメーアは言葉を紡ぐ。
テルルがギガントナイトメーアに罵詈雑言を投げ掛け続ける一方、ギガントナイトメーアの意図を察した面々は、一斉に動いていた。
ドルセリオンブロスは轟音と土煙を巻き上げてギガントナイトメーアに飛び掛かり、ロマンはソワレとアジロの耳を塞ごうと駆け出す。
マージンはギガントナイトメーアの横っ面をぶん殴る代わりとばかりに特大のギガボンバーを振りかぶり、マユミは自身の身体でもってギガントナイトメーアの喉に栓してやろうと一直線に空を舞う。
「…とうに」
ギガントナイトメーアの口の動きが、4人にはスローモーションの如く、とてもゆっくりに感じる。
しかし、間に合いはしないかった。
誰一人として。
「…死んでいるんだから」
その瞬間、勇猛に鳴り響いていた歌が、止んだ。
続く