「げっ、何でこんな所に?」
「いきなり不審船呼ばわりされてるわよ!アンタ達ほんと一体何やらかしたのよ?」
「大丈夫、証拠は何も残してないはずだ」
マユミにとっては全然大丈夫じゃないセリフを吐くロマンの眼前で、残念ながら動かぬ証拠が曝される。
「この写真を見なさい。身に覚えがないとは言わせないぞ。お前達には禁止されているギガボンバー漁を操業した嫌疑がかけられている。大人しくヴェリナードまでついてきてもらおうか」
アカックブレイブが懐から取り出したのは、おきょう博士のもとにヴェリナード沿岸警備隊から送られた例の写真。
「お~、よく撮れて…って、人の顔面をわいせつ物みたいに扱ってない!?ひどくね?」
マージンは写真を見るなり、まったくどうでもいいポイントに噛み付いた。
「何を言う、これは人道的配慮というやつだ」
「人道的に晒せない顔面ってこと?ひひっ…」
勝手にあらぬ勘違いをしてツボに入り、声も出せない笑いに空中でのたうつマユミときみどり。
「こら失礼だぞ、マユミ」
「たいがいアンタも同罪だからな?」
マユミを注意するクマヤンだが、堪えきれない笑気に口許が歪んでいるのをロマンは見逃さなかった。
外野が一悶着している間にも、マージンとアカックブレイブの言葉のナイフの応酬はどんどんエスカレートして、あらぬ方向へ突き進んでしまっている。
「ヴェリナードの牢屋飯はとにかく不味いんだよ!アズランを見習って欲しいね!」
「清く真っ当に生きていれば食する事のない料理に文句を付けるな!まったく、ティードもハクトくんも人格者なのにどうしてお前はそうなんだ!?」
「二人は関係ないだろ!?毎回横暴なんだよなぁ、赤ゴリラは」
家族を持ち出され、ついついマージンの口からも悪態が出る。
「赤…ゴリラ…だと…?」
アカックブレイブに握り締められ、マージンとロマンのツーショット写真がグシャッと無惨にひしゃげる。「ひっ…!?」
売り言葉に買い言葉で言い過ぎた、と思ったものの、もはやあとの祭り。
アカックブレイブからゆらりと立ち昇る殺意の波動に怯むマージン。
「割る」
アカックブレイブは怒りのあまり限界まで瞳孔をみひらいて、たった一言、ポツリと呟いたのだった。
続く