ケラウノスマークツーが攻撃を止めないのは誤算だったが、ハクトの次善策の為の時間稼ぎにはなった。
『…接近する部隊の存在を検知』
未だ距離はあるものの、迫りくる足音と甲冑の鳴る音をケラウノスマークツーのセンサーは捉える。
ケルビンを追う道すがら、メギストリス城にも連絡を入れておいた事が功を奏したのだ。
このまま睨み合ううちに援軍が到着してくれれば。
しかしそんな淡い願望は叶わない。
『リミッター限定解除。魔弾発動。ライデイン』
ケラウノスマークツーが高く掲げた自身の刀身に天井を貫き雷撃が降り注ぐ。
「なっ…!?」
「一気に勝負を決めるつもりのようだな。柄に仕込んだ特殊な筒に納めた呪文の発動による魔法剣。ケラウノスマークツーの隠し玉だ。少年、君の剣の動力源たるギガボンバーを参考にさせてもらった」
「解説どうも!あなたも吹っ飛びますよ!?…くそっ!やるしかない!!」
ハクトは僅かな時間で覚悟を決める。
『奥義、メガブレイク』
淡々とした口調と裏腹に、両手で肩に担ぐような構えから、極大な雷光の剣が豪快に振り下ろされた。
「…ごめん!」
ハクトは自身の至らなさを、相棒に詫びた。
ケラウノスマークツーの超はやぶさ斬りを受けた際、ハクトの剣には大きな亀裂が走っていた。
今なおハクトの身体を包み、護ってくれているスーツもまた、先程受けたキングダムソードのダメージでぽろぽろと欠片を落とし続けている。
もっと上手く、僕が立ち回れていれば、こんなにもボロボロに傷つけることはなかった。
「…ブレイブ!!カリバー!!!」
短時間のうちに、二度目の必殺技。
自身のエネルギーの放出に耐えきれず、刀身が震え、亀裂が拡がっていく。
「おおおおおおッ!!!」
メガブレイクを待ち受ける形で、本来とは逆に地から天へと振り上げた。
ぶつかり合うエネルギーの余波が千々に乱れ飛び、細い雷に打たれてブレイブジュニアのヘルメットが弾け飛んだ。
朝日のような眩い光に晒されながら、ハクトはしかと目を見開き、遂には剣を振り切った。
同時に、乾いた音を立ててハクトの剣も砕け散る。
そのまま、相手が奥義を跳ね除けられよろめいた隙を逃さず、残る盾の尖端をさまようよろいが被るダークボーンヘルムの鼻先に叩き込む。
一拍の後、縦真っ二つにダークボーンヘルムが割れるとともに、ケラウノスマークツーはバラバラに崩れ落ちるさまようよろいのパーツの中に埋もれた。
「…見事だ、少年」
ケルビンは勝負の帰結をただ座して見つめ、ハクトに敬意を表するが如く、やがて到着したメギストリス兵に大人しく連行されていったのであった。
続く