「見て見て~!マンガみたいなお肉っ!」
一方、連れと会場を訪れていたライティアは、いつもの黄色い服に身を包み、虎の尾のようにポニーテールをしならせながら、トロフィーの如く骨付き肉を掲げた。
「あら、良かったわね」
「…!セイロンちゃん、今の何?」
「何って…生ハムよ?」
快活なライティアとは対象的に、セイロンは貴族のご令嬢を思わせるドレスに相応しい典雅な所作でアラカルトの一品を食した。
「何か巻いてあった!虎色のやつ!!」
「虎…?ああ、パイナップルね」
「探してくる~!」
「あらあら、忙しないこと」
セイロンは駆け出していくライティアの背を見送ると、残る塩味を流すべく紅茶のカップを口へと運んだ。
「他のメンバーは来れなかったんだ?」
「ああ、基地の大掃除もあってな。私が代表者として訪問させてもらった」
「ヴェリナード軍組も年内仕事納めなんて無しか、アスカちゃん、ちょっと残念ね」
「おかげで平和に年が越せるんだから、精一杯感謝しないと」
「うむ。ありがたい話だ」
「それにしても、ハクギンくんに妹がねぇ」
その背後では、3人のオーガが矢継ぎ早に井戸端話を咲かせている。
この場に来れなかったメンツの状況に続き、ハクトも居合わせた大地の箱舟暴走の一件、仔細までを知らなかったティードはセ~クスィ~の話に少し驚きを見せた。
「ああ。兄に似て、とても良い娘だ」
セ~クスィ~のあたたかな目線の先、妹フタバの為に取り皿を用意してやる兄ハクギンの姿がある。
ティードの息子、ハクトもまたハクギンとフタバに並び立ち、料理を手に歓談していた。
「そっか。ふふ、何だかセ~クスィ~、すっかり二人の叔母さんみたいね」
「お、おっ、おばっ…」
何気ないティードの指摘に、傾けていたシャンパンが気道に入りむせるセ~クスィ~。
「いやティーちゃんも年齢的な意味で言ったんじゃなくてね?大丈夫?」
「そうそう、悪い意味じゃなくて」
「せめ…ゲホ、お姉さんと…ゴッホ、ゴッホ」
ティードとテルルは咳の収まらないセ~クスィの背を両サイドから撫で擦る。
「さて!今日は余興にブリカマ姐さんとセッション組んで、『ExtE』の特別ミニライブもあるから、二人共楽しんでいってね!じゃ、ちょっとリハ行ってくる!」
「…ごほっ、げほ、それは、ゴホッ、楽しみだ」
「うん、ほんと、そのミニライブの為だけでも、ここへ来た甲斐があるってものよ!楽しみにしてるわ!」声援を背に、未だに咳の続くセ~クスィ~とティードを残し、他のメンバーのもとへと向かうテルルであった。
続く