そんな中、『OZ』の工房に向けて道を急ぐパーティの姿があった。
「ほら、急ぐポっ!」
とんがり帽子のプクリポがハリセンで地を叩き皆を急かしたてる。
「いや寝坊したのうりぽだよね!?何悪びれず仕切ってるの!?」
みっちり紙の束やら資料の本やらを詰め込んだ鞄を背負ったドワーフがよろめきながら後を追う。
「とにかく急げ急げ!!ご馳走食いっぱぐれるぞっ!!!」
鉢金を巻いたウェディの少年は、仲間の様子に満面の笑みを浮かべた。
その細くも逞しい手は、太陽のような明るい髪の少女の手を、しっかりと握っている。
「待ってよソウラ、もう少しゆっくり~!」
「ごめんごめん、もちろん、飯も楽しみだけどさ!なんてったって、あれから今日までの間に、皆、どんな冒険をしてきたんだろうな!?早く話が聞きたくって、つい、さ!」
「うん、そうだねっ!」
「ワクワクするね」
「楽しみだポ!」
若き冒険者たちは、期待に胸を膨らませ、道を急ぐ。
そして、ちょうど対岸からも、工房を目指す一団の姿がある。
「若様、気になる料理がありましたら、まず俺が毒見をしますぜ!」
「お前は自分が食べたいだけだろう?今更毒を盛るような手合ではない。失礼を申すな」
「まったく、顔を合わせればお二人はいつもそうなんですから…」
「お前たち、早く来ないと置いて行くぞ」
変わらぬやりとりを交わす仲間達の様子に、彼らに見られぬようこっそり微かな笑みを浮かべ、一人風を受け前に出る。
「「「ストームフォースはずるいですよ若様!」」」
最後に、工房を目指すパーティが、もう一組。
「アンタが昼間っぱらから長風呂すっから。…あ、まさかと思うけど、覗き穴とか仕込もうとしてたんじゃないだろうね?」
「そんなまさか。ヨナっぺ、もう少し信用して欲しいなぁ」
ドワーフの武闘家の叱責に、エルフの術師は軽薄さが形をなしたような態度で返した。
「ふぅ…。まだ懲りていないのです?」
目もと以外を薄布で覆った褐色の僧侶が目を細める。「ああ、その視線、最高ッス…。でもザキの詠唱はやめて。おっ、ありゃソウラ達じゃねえか?」
そうして一行は、前を行く見慣れたパーティの姿を捉える。
「ホントだ!お~い、ソウラ~っ!!」
リーダーのオーガの少年は、久々に会う戦友に大きな声で呼びかけた。
その背に担いだナップザックの中では、ナドラガンドにてひとときの再会を果たした妹から託された、銀の箱が揺れている。
その箱の謎が、盟友一行をとんでもない冒険へと誘うのだが、それはまた別の物語。
舞い始めた雪の中。
やがて主賓達を迎え、街ぐるみの宴の喧騒はいましばらく続くのであった。
~良いお年を & A Happy New Year~