「いよぅ!!皆の衆!さ、まだ空いてる今のうち、お詣り済ませちまおうぜ」
流石は大工の棟梁、袴姿が一番似合うロマンを筆頭とする男性陣とフタバ達は合流を果たし、大所帯で石段を登っていく。
「…あれ?ハクト、マーちゃんは?」
「え?見てないよ?てっきり、母さんと一緒に来るかと…」
ここへ向かう道中、マージンのことなどすっかり眼中になくヒッサァとずっと話しながら来たハクトはきょとんと言葉を返す。
「ユルール。アマセの姿が見えないようだけど…」
ヨナもまた、皆の振袖姿を目当てに絶対に現れるはずの人物の不在を不審に思った。
要注意人物の不在がようやく一同に明らかになった頃、捕らわれのケラウノスはアマセとマージンから理不尽な要求を突き付けられていた。
「ケラウノスくん。君が随分と美味しい思いをしていることは、バッチリ証拠が上がっているんだ」
「お兄さんたちにも、ちょ~っとだけお裾分けしてほしいんだよなぁ」
手をにぎにぎしながら、ケラウノスに迫る二人。
「要請内容を理解しかねる」
「はっ!すっとぼけちゃってまあ!」
「意外とムッツリか?」
「会話の内容が支離滅裂である。簡潔に、理路整然と願う」
今ならまだ、通信でフタバを呼び戻せるかもしれない。
急いで現状を打破したいところだが、先程、未知の呪文で音声を遮断された事から、ケラウノスは二人の手札を読みきれず、強硬手段を取れないでいる。
「君は本日、フタバちゃんとともに更衣室に居たね?」
「肯定。当機は常にフタバと行動を共にしている」
「そうそう、そうだよねぇ?その時の光景は、メモリーしてあったりなんか、するのかなぁ?」
「フタバの機能管理維持の為、全て記録されている」「そ~かそ~か。なぁに、簡単な話でね、我々にそれを見せてほしいんだなぁ」
アマセとマージンの表情、声色、心拍数、その他ありとあらゆる情報を分析し、ケラウノスは冷静に解答を導き出す。
「内容を理解………………正当性0%。その要請には邪な理由しかないと判断する」
なんという事だ。
馬鹿どもに付き合わされて、とんだ無駄足である。
フタバを呼び戻すには既に忍びない距離に離れてしまった。
今、ケラウノスの思考回路を埋め尽くしているのは、かつて創造主ケルビンに抱いたと同じ、激しい怒りであった。
「フィールドスキャン最大出力。索敵範囲内のメタッピーに強制アクセスを開始………完了」
ケラウノスの眼前に制御を奪い取ったメタッピーの視界が広がった。
同時に音響センサーで捉えた往来の人々の会話から、最も効果的な一撃を繰り出すべくメタッピーを操作する。
やがて、ここまでの道中、ニオウ門通りを少し離れたところに、ケラウノスはうってつけの会場を発見した。
「愚か者ども。地獄を見るがいい」
怒りの言葉を吐き捨てるとともに、ケラウノスの瞳が初日の出の如き閃光を放った。
ケラウノスの瞳は光学センサーであるとともに、アマセが睨んだ通り映像を投写する機能を秘めている他、戦闘時は目眩ましのためにスパークショットと等しい光量を放てるだけの出力を誇るのだ。
「「ぐわああああああっ…!?」」
新春の青空に、なんとも無様な絶叫が響き渡るのだった。
続く