「…で、これは一体?」
マージンとアマセが不在であることはさておき、とりあえずお詣りを済ませ、ケラウノスを返却してもらおうと戻ったフタバ達は、目の前の光景に首を傾げる。
「もっさりが…!もっさりの壁が消えない!!?」
「山盛りのもっさりが眼前に!誰か、俺の目を潰してくれぇ!!」
そこには大木に立て掛けられたケラウノスを前に、日向へ放り込まれたミミズの如く悶えながら激しくうごめくマージンとアマセの姿があった。
「え~と…」
何となく今回もきっと自業自得なんだろうとは察したが、それにつけても状況が読めない一同に対し、ケラウノスは説明を始める。
「フタバと揃っての拝礼を妨害された上、振袖に着替える際の皆の様子を投影するよう要求された為、措置を講じた」
「ほう」
「へぇ」
「ふぅん」
主に女性陣からゴミ虫を見るような視線がアマセとマージンに向けられた。
包み隠さず悪事を暴露されようとも、肝心の二人はそれどころではなく、引き続きもがき苦しんでいる。
その理由もまた、ケラウノスから詳らかにされていく。
「ちょうど都合良く近隣にてドワーフ種族による相撲大会が催されていた。その光景を編集し、スパークショットの応用で二人の角膜に転写したのだ。しばらくは山盛りのふんどし姿が瞳に焼き付いて消えないことだろう」
「うわ…えぐ…」
男性陣は皆一様にケラウノスの凶悪な仕打ちに言葉を無くした。
「新年早々にバカどもが。まあ、たまにはこれくらいのお灸を据えてもらったほうが、丁度いいよ」
しかしアマセをよく知るヨナは、どうせこれでも懲りないんだから、とヒラヒラ手を振る。
「まあ、それもそうか」
「そうね」
「うんうん」
セ~クスィ~、ティード、テルルら、平素よりアマセとマージンの率いる黄昏の助平兵団の被害にあっている者たちは皆、ヨナの言葉にさもありなんと頷くのであった。
「しっかし、ケラウノスちゃんは残念だったわね。もっかいお参り行こっか?」
ティードは今回の一件、夫の不始末によるところであるために罪悪感もあり、ケラウノスに提案した。
「お気遣い痛み入る。しかし、随分と列も伸びているようだ」
ケラウノスの言う通り、いつの間にやら参拝の順番待ちの列は伸びに伸びて遥か彼方まで続いており、最後尾が見えないほどだった。
「それに、肝心の記録は収めた。問題無い」
「…ふぅん?まあ、それならいいけど。本当にごめんね」
ケラウノスの言葉の意味は今ひとつピンと来ないが、とにもかくにもマージンの代わりにお詫びを述べる。「報復は果たした。効果の程に満足もいっている。それに何より、そろそろフタバの腹の虫が鳴く頃だ」
本来であれば地脈エネルギーで稼働するところを、食物からの変換で行っている為、フタバの燃料事情は芳しくない。
「うっ…ケラウノス、そういうことは言わなくていい!」
フタバは恥ずかしがりながらケラウノスを引っ掴み、その背にマウントするのであった。
続く