「「かっ…ら!!!!!!!!!」」
神速メラガイアーの全弾命中でもまだ優しいのではなかろうかという刺激が口内に炸裂する。
絶叫だけでは済まず、天を仰ぎ口から火を噴いた。
そう感じる程の辛味が二人を襲う。
「「米っ、米!!!」」
唐辛子の辛味に水は逆効果である。
ひりつくような痛みから逃れるために茶碗をひったくり、白米を流し込む。
「「あま~い!!」」
白米とはこんなにも優しく美味しい食べ物だったのか。
瞬く間に2つの茶碗から同時に白飯が姿を消す。
僅か数秒の間に拷問のような一口をぶつけられた二人たが、ミアキスに白米を補充してもらうと、躊躇いなく二口目のために匙が動く。
殺人的な辛さに目から鼻から汁が垂れ、舌は痺れ、唇はヒリヒリと痛みを訴えているが、それでも脳が、胃が、けして辛さに呑み込まれ消え去ったりせずにそこにある、確かな旨みを求めているのだ。
辛さに嘆き苦しみながらも、その目につたうのは歓喜の涙だった。
やがて、伝説の勇者と竜王との戦いもかくやと思えるほどの激しい食事を何とか終結させ、ヒッサァとハクトは虎酒家をあとにした。
その唇が顔面の三分の一を占めるほど肥大していたというのは、あくまでも蛇足である。
そして、同じ空の下で。
「んん、飽きた!飽きたぞ~!!」
ケルビンの雄叫びとともに、彼を捕える独房の壁が爆発で弾け飛ぶ。
一日三食、日によれば好きなだけ昼寝もできる生活は悪くなかったのだが、如何せん、どれも甘ったるいメギストリス風の食事にも、怠惰を貪るだけの無為な時間にも飽きてきた。
「さぁて、次は何を造るか…わぶっ…!?何だ何だ?」
黒煙が登りメギストリスの衛兵たちが右往左往する大混乱の渦の中、脱獄し意気揚々と歩き始めたケルビンの顔面に、一枚のチラシが風に運ばれ貼り付いた。
「…ドルブレイブショー、か。ふん、忌々しい。賞賛されるのは何時だっておきょうばかりだ。しかし今に見ていろ愚民共…」
その知能を活かして人の役に立つ発明をすれば良い話なのだが、ケルビンにそのような甲斐性はあるわけがない。
腹立たしげに劇団のチラシを破り捨てようとして、はたと手が止まる。
目線の先、チラシの上には、やや本物よりも美化されたドルセリオンのバストアップが描かれている。
「…悪くないな」
ふとした思いつきに乾いた笑みを浮かべ、ケルビンは一路、ドルワーム大陸へ向かうべく歩き始めるのであった。
~完~