「何でこうなるかな!?絶体絶命のピンチに、追加戦士が駆け付けたって感じだったじゃん!?」
「文句を言わず集中!やはり敵だったというだけだ。それより、来るぞ」
「もっと操縦訓練しときゃ良かったっ!」
操縦の為の思念伝達装置も兼ねてドルセリオンの頬に設けられた小さなグリップだけを頼りに、ダイダイックブレイブとブレイブ2号はドルセリオンの左右の肩にそれぞれ立ち、敵を迎えうつ。
「何だかコイツも作画変わってんなぁ」
相対するはダイダイックブレイブにとって苦い敗戦を喫した黒紫の巨人。
しかし今回はこちらも条件等しく巨大兵装がある。
胴体を構成するマシンボードを起点に四肢に向かい紫電を迸らせる姿は以前遭遇した時よりおぞましいが、操者不在故かその動きは緩慢で、幾度か繰り出される回転ノコの攻撃をドルキャリアが転じたシールドで難無く防ぐことができていた。
「油断するなよ!いつまたさっきのアレが来るかわからん!」
「分かってる!でも正直、しがみついてるので精一杯、です!!」
普段、今よりもさらに激しい戦闘機動においても仁王立ちでドルセリオンの肩に鎮座するリーダーの化け物っぷりをあらためて実感する。
言葉にこそしないが、ドルセリオンの乗り心地の良さに辟易しているのはブレイブ2号も同様であった。
その快適性たるや、ほとんどドルセリオンの腕しか動かしていないというのに、少し気を抜けば極楽浄土へ真っ逆さまである。
そしてドルバリオンに対し、二人が積極的な攻撃にうって出ることが出来ないのにはもう一つ訳がある。
ブレイブ2号が口にした、さっきのアレ、である。
「やっちまってくださいよ、リーダー!」
ダイダイックブレイブの悪党じみた声援に、意気揚々と送り出されたアカックブレイブの操るドルセリオンの目の前で、ドルバリオンは各ドルボードに分離展開し、ドルセリオンに取り憑いたのだ。
両手両足の自由を奪われ、仕上げに背部へマシンボードが接続されようとしたところで、純白のドルレーサーを駆る蒼髪のアカックブレイブが颯爽と現れた。
今でこそオーソドックスなドルボードスタイルのドルストライカーを専用機とするアカックブレイブであるが、そも、おきょう博士と出会った頃には二輪型ドルボードを愛機としていたのは『アカックブレイブ誕生秘話』にも記された有名な話である。
未だダイダイックブレイブ達にとっては正体不明の青髪のアカックブレイブもまたその記載に恥じず、魔装も身に着けていないというのに卓越した操縦技術で山とも坂とも呼べぬ岩くれの塊を駆け登り、ドルレーサーで宙を舞って体当たり、マシンボードを払ってのけた。
その隙にドルセリオンは自由を取り戻し、紆余曲折あったものの、敵と思っていた相手が実は味方で熱い共闘の幕が上がる…はずであった。
「………貴様は、誰だ!」
「君こそ、何者だ?」
ドルレーサーを乗り捨てドルセリオンの肩に飛び乗ると、蒼髪のアカックブレイブは、自らと瓜二つの相手にケラウノスを突き付けた。
赤髪と蒼髪、しかし全く同じ相貌が、ドルセリオンの肩の上で交錯するのであった。
続く