『痛々しいな。さてそろそろか。今度こそドルセリオンを頂こう。ドミニオンコード!!』
ケルビンの音声コマンドに従い、各機に分離したドルバリオンがドルセリオンにまとわりつく。
その腕に、脚に、追加装甲の様相を呈していながらも、それはさながら拘束具のようだった。
仕上げとばかりに背後から迫るマシンボードを、一度は雷撃で撃墜するが、すぐさま代わりのマシンボードが飛来する。
残機がいくつ存在するのかなど、気にするだけ無駄だろう。
失敗した時のプランBなど存在しない。
ひたすら成功するまで自身が最善策と疑わないプランAをごり押しする。
その為の準備は実に用意周到、ケルビンはそういう男だ。
「やむをえん。…許せ、ドルセリオン」
巨大メカには自爆装置。
聞かされたときは到底理解の及ばぬ発想だったが、今ならマージンの言葉の意味、その必要性が理解出来る。
しかしながら、ドルセリオンにその機能は存在しないのだ。
機械の身体なれど、より繊細で滑らかな挙動を実現するべくドルセリオンの駆動系には筋肉や筋と呼ぶべき人工筋繊維が多用されている。
それはドルセリオンの強みであると同時に、弱点でもあった。
リミッターを解除した魔装で、絡みついた大質量とここまでの戦闘のダメージを顧みずドルセリオンをぶん回す。
「ぐぅ…ッ…!」
無理を為した当然の帰結、小規模な爆発が関節部を中心にドルセリオンの各所で連鎖的に発生する。
全身の人工筋繊維がバーストしたのだ。
同時にアカックブレイブのスーツもまた、ドルセリオンの過負荷のフィードバックを受けて二の腕や太ももの増強筋繊維が断裂を起こし、そのダメージは装着者にまで及んだ。
『ほうほう。まさかそんな手段に出るとは。なかなかなかなか。…修復が面倒だな。まあ、いい。目的は果たした』
膝をつくアカックブレイブと同様に、瞳に光を失い地に伏せたドルセリオンの背に、遂にマシンボードが合着する。
ペタンを応用した重力操作により、力なく項垂れたまま連れ去られていくドルセリオンは、さながら張り付けにされた罪人のようであった。
追おうにも、ドルセリオン同様にバーストした魔装はもはや重りでしかない。
ずっとマシン系モンスターを捌き続けた2号にダイダイック、フタバも限界だ。
支配を解かれたのであろう、散っていくマシン系モンスターの群れと、ゆっくりと飛び去るドルセリオンを、ただ苦々しく見送るしかない一同であった。
続く