「…ケルビンがドルセリオンの修理を終えるまで、猶予はどれくらいある?」
手当を受け、両腕をすっかり包帯に包まれたセ~クスィ~が尋ねる。
「仮に私が直せば一週間。…悔しいけれど、彼なら5日で仕上げてくるでしょう」
あれだけの大質量だ。
運び込まれた先はトレースできている。
ガタラ原野に確認されたケルビンの秘密ドックだ。
隠し通せるつもりも、そもそも事ここに至り、隠すつもりも毛頭ないのだろう。
施設の収まる山を背に機械系モンスターが群れをなし、軍隊の如く規則正しく整列して防衛に当たる様子が、一足先に現地で諜報偵察にあたるクロックブレイブを通して、ドルブレイブ基地内のモニターに映し出されていた。
「例え5人がかりでも、この包囲網を突破するのはホネだな」
一人魔装も解かぬまま、背を無機質な壁に預けたブレイブ2号は腕を組みモニターを睨んだ。
「はっきり無理って言わないのが素敵」
飄々と口ではそう言えど、魔装を解きベッドにあぐらをかいて頬杖をつくネコギシもまた、まんじりともせずモニターを見つめ、突破の手立てをひたすら脳内シミュレートしていることは、皆が知っている。
『突破出来たとして、あのドルセリオンもどきに加えて、ユートピア、でしたか?あの統率力と、何より不滅性の対抗策がない。かと言って長引けば、加えてドルセリオンをも相手にすることになる…』
こちらへ向かっている最中のアオックブレイブが音声のみの参加で解決すべき更なる難題を付け加えた。
黙っていると約束したが、蒼髪のアカックブレイブが未来から来たアカックブレイブだということは本人自ら暴露してしまったこともある。
事態を打開する為、おきょうは今現在知り得る限りの情報を皆で共有したのだ。
「八方塞がりだねぇ」
流石の珊瑚の知恵にも、光明は見い出せない。
「…可能性があるとすれば、やはり…」
「未来から来た私、か。…だがしかし、彼女は…」
肝心の本人が、アカックブレイブことセ~クスィ~を他人と断じた。
「そうね。私もケラウノスも、彼女の話に一度は納得したものの、大事なピースが欠けている気がしてならない。そして恐らく、ケルビンはそのピースを含め、全てを知っている」
3日間という時間提示や、次元の狭間という単語、蒼髪のアカックブレイブの転移現象についてもケルビンは詳細に把握している様子であった。
この情報の欠落は恐らく、致命的なものだ。
「まあ、それは気を揉むだけ無駄な事だ。作戦はもう動いているのだから」
「そうね、…最初から一貫して彼女だけは、まっすぐあの人を見ていた。賭けましょう、フタバちゃんに」本人のたっての希望で、ドルブレイブの側としても既に蒼髪のアカックブレイブの捜索にフタバとケラウノスを送り出していた。
破れかぶれの総攻撃となるか、はたまた、期待する助っ人が現れるか。
蒼髪のアカックブレイブ、ココソーが再びこのアストルティアへ舞い降りるまでの3日間は、あっという間に過ぎ去るのだった。
続く