ココソー不在のまま戦闘を開始した面々だが、ココソーがいずれ必ずこの戦場に駆け付けてくれると信じ、疑う者は一人もいなかった。
あまりにもな多勢を前に、しかしブレイブ2号の啖呵に誇張はなく、遅々とした進み幅ながら着実に敵群体の数を減らしていく。
順調にみえた。
スーパードルセリオンが動き始めるまでは。
「アオック、危ない!」
2体の機動兵器が融合した超重量、しかし、ジェットドルバード形態時に航空力学を無視した巨影を浮かせるだけの出力を持つ脚部サイドカードルボのタイヤが転じたジャイロにより、歩行ではなく非常に滑らかなホバー移動で、スーパードルセリオンは戦闘の騒音に紛れ至近距離まで接近していたのだ。
アオックブレイブごと地面をすくい上げるように振るわれたスーパードルセリオン右腕の回転ノコギリ、駆け付けたダイダイックブレイブが手に握るブーメランの先端を何とかアオックブレイブのスーツの襟元に引っ掛け、ぶん投げるようにして救い出したものの、散弾の如く飛び散った岩くれの直撃を受け二人は錐揉みながら吹っ飛び地に打ち付けられる。
流石に魔装で身を包んだ状態であろうと、ダイダイックブレイブが数瞬意識を狩られている間に、スーパードルセリオンは羽虫を叩き潰すかのように右腕を振り被った。
同様に倒れているアオックブレイブは勿論、圧倒的な数の暴力により分断されていた他のメンバーの手も届かない。
ココソーの世界におけるかつての出来事をなぞるような状況、しかし今この場には、未完成だろうとなんであろうと、ビッグFというジョーカーがあった。
「おおおいっ!動かなくなっちまったぞオッサン!!」
岩を投げ放った姿勢のまま硬直し大きく傾いたビッグFのコクピットから転落せぬようマージンは必死にしがみつく。
「馬っ鹿お前!バランサーの調整すらまだ済んでねえっつうのに!」
何とか動くようにするだけの突貫工事、道すがら微調整のためにフタバの運転するサイドカーでビッグFと共に戦場へ駆け付けたフィズルの手元の端末には、巨岩を投擲したことにより一瞬で真っ赤に染まったビッグFのステータスが表示されている。
しかしその甲斐あって、投石がスーパードルセリオンに直撃したことにより生まれた隙にダイダイックブレイブは意識を取り戻し、かろうじて難を逃れた。
スーパードルセリオンを操るユートピアもまた、ダメージこそ大した事はないが、データにない闖入者の姿に慎重をきして再びドルブレイブから距離をとる。
フィズルはマージンに文句を飛ばしながらも、両の人差し指だけを握り拳から突き出し、驚異的な速度でキーを叩いて噴出するエラーをひたすらに黙らせていった。
やがて関節から焦げた臭いと若干の煙を放ちつつもビッグFが投擲後の姿勢からようやく立ち直ると同時、ココソーはビッグFの肩の上で、入れ替わるように深々と頭を下げる。
「すまん!!!!!!」
隣のマージンが危うく失神仕掛けるほどの大声量で、ココソーの一言が戦場を貫いた。
事情も打ち明けず、自分一人の判断で敵対行動を取り、状況を掻き回し、結果としてここまで多大な迷惑をかけた。
それでも彼らはこんな自分に、共に戦おうと、手を差し伸べてくれたのだ。
これまでの過ちを償える言葉などない。
抱えきれないほどの感謝を表せる言葉もない。
ただ一言だけ、口をついた言葉だった。
続く