「………なんだ?その格好は…」
「あ、母様!」
遅くに目覚めた朝、しんりゅうの化身アキバは、愛娘りゅーへーの姿に瞠目した。
昨日1日中、水鏡を通して下界、とりわけ意中の鶏、じゃなかったあの生臭神主の様子をずっと眺めていたりゅーへー。
あまりにも幸せそうな顔をしているものだから、咎めず放置した事を今更ながら後悔する。
「母様!どうでしょう?似合っていますか?らぐっちょ様がアストルティアで流行らせようとしていらっしゃる服装で、ええと、しゅうれんぎ、というらしいのですが」
生まれて初めて身にまとう系統の服装に、恥ずかしさ半分、ときめき半分でりゅーへーはくるりと身を翻す。
………やはりアイツのせいか。
アキバのこめかみにくっきりと浮かぶ青筋、この時、たとえ遥か離れていようと、らぐっちょの背筋に半端ない悪寒が走ったのは言うまでもないだろう。
平素、まだエルドナ神が健在の頃のエルトナ様式を色濃く残す服装をまとうアキバやりゅーへーにとって、しゅうれんぎの突き詰めたラフさ加減は、トレーニングウェアはおろか寝間着の概念も貫通し、もはや下着に等しいといっても過言ではない。
しゅうれんぎに合わせては、袴もシンプルにせねばバランスが合うまい。
太ももの半分も隠せず、申し訳程度に巻き布をあしらった簡素なショートパンツ姿。
しかしながらしっかりとした布地の質感は、りゅーへーの従者たちの手によるものであろう、キッ、と視線をそちらへ向けた。
りゅーへーの姿を心より称賛し、白骨の掌を打ち鳴らしていた従者たちは縮み上がる。
「…あ…いや、すまん。お前たちが悪いわけではないのだ…」
アキバは視線に険が立ってしまったことをすぐさま詫びた。
りゅうきへい、リザードマン、アッシュリザード………アストルティアの大地で死して後、魂と骨のみの姿となりて甲斐甲斐しく我ら親子を支えてくれる竜の末裔たち。
りゅーへーから頼まれれば、彼らに断ることが出来よう筈もない。
むしろ、しゅうれんぎと合わせるという制約の中、最高の仕事をしてくれたと称賛して然るべきだろう。
「似合っているぞ。とても愛らしい」
露出が過多だと思う。
しかしながら、この感想に嘘はない。
「本当ですか!?嬉しい!!皆もありがとう!!!」りゅーへーはしゅうれんぎの調達から、コーディネートの考案にボトムスの作成まで、従者たちの惜しみない協力に満面の笑みで礼を告げるのであった。
続く