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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: レンジャー
レベル
: 130

ライブカメラ画像

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レオナルドの冒険日誌

2024-06-16 20:37:53.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作『じローライフ』その14

具材は勿論、つけダレとして生卵を用いるところもすき焼きと同じ、しかしながらやはり、サイコロステーキを上回る厚みと大きさ、大胆な肉のサイズがまず意表を突く。
「いただきます!………ふ~っ、ふ~っ、あむ、あつっ」
今日の為に奮発したと聞いた、牛肉はその厚みから信じられないほどに柔らかで、あげはの小さな口に合わせ簡単に噛み切れた。

「美味し~~~ッ…!」
主張の強い赤味噌を溶き卵の甘味が見事に丸め込んで、各々の良い所だけを相乗効果で高めあう。
豆腐や春菊も、すき焼きで相見える時とはまるで違う表情を見せた。
「しらたきも最高…!」
具材を次々に潜らせるうち、溶き卵もまた味噌ダレと交わり、鍋の味に従順なしらたきのドレスとなってオスシの口を楽しませる。

「…これは…でも残念だな…」
頬をリスのように膨らましながらも、いなりの表情が僅かに曇る。
鍋の味は文句なし。
しかしこれほどまでのポテンシャルを見せつけられると、尚の事、昼間に漬け始めた梅酒が完成していればと悔いが残るのは已む無しである。

「えへへへ…実はこんなものもあるのだよ」
いたずらな笑みを浮かべ、じにーが何処からか持ち出した小さい瓶の蓋を開けば、ふわっと梅とアルコールの薫りが立ち昇った。
「え!?もう出来た訳ないし…どうしたのそれ!?」「修繕のときに出てきたんだよねぇ。あ、傷んでないのは確認済みだから、安心して」
きっと、今は亡きたぬきちのとっておきだろう。

エルトナに伝わる宗派の一つに、生前に残した財をもって用意したお酒や料理を食べてもらうという布施をすることにより、故人が無欲無我の境地になれるという教えがある。
勝手な考えだが、代わりに飲み干してやることもまた、弔いの一助になるはずだ。
カンテラですくいあげ、御猪口に琥珀を移すと、じにーはいなりに手渡した。

「…じゃあ折角だし………あっ、コレ、やべぇやつだ!」
一舐めでわかる桁違いのアルコール度数の高さ。
しかし、長年漬け込まれたことにより、溶き卵が赤味噌の尖りを丸めたのと同様に、梅の味がアルコールの引っかかりをなくしてするりと喉奥へ流れてしまう。
「…てか、じにー、もう出来上がってんね!?」
「なぁに言ってんの、あははは!まだ一杯だよ一杯!あははは!」
すっかりオーガのように真っ赤になり、けたたましく笑い飛ばすじにー。
控え目に言っても全くもって大丈夫そうではない。

「じにーは私がずっと面倒見るからだいじょぶー」
「わぁリーネさんまで!?」
場の空気も災いしているのだろう。
並ぶリーネもまた、茹でダコのような顔である。
思わぬカンフル剤により爆発的に賑やかさを増した宴は、更に夜遅くまで続いたのであった。

「………ふぅ。あ~、これ、明日まで残りそうだなぁ」
夜中に一人、目を覚まし、皆を起こさぬようそっと、夜風にあたりに出たあげは。
久々に、良い酒を飲んだ。
二日酔おうと、悔いはない。
そうしてしばらくぼんやり星を眺めるうち、不意に、こんな山奥で有り得るはずもないのだが、誰かの気配を背後に感じた。

「…良い夜だなぁ、お嬢さん」
「ええ、そうですね」
何となく、振り向いてはいけない気がした。
ぴりっと背びれが冷える感覚。
きっとこの声の主は、この世の者ではない。
しかし、不思議と恐怖を感じなかったのは酩酊故か、それとも、その声がとても…優しかったからか。

「賑やかな様、楽しませてもらった。…それにしてもアイツめ、まったく…秘蔵の酒をあっさり飲み干しおって」
ぼやきながらも、何処か嬉しそうに声は続く。
「ふふ、とても、美味しかったです」
真っ直ぐに言葉を返せば、ふわりと梅が香る。
「かかっ、ならばまあ、良きかな」
ひときわ大きく笑い飛ばしたあと、くいっと、酒坏を飲み干す音が最後に聞こえた。

「………あれ?」
今のは、夢?
小鳥たちのモーニングコールが響く中、あげはは布団から起き上がる。
外に出て、昨日声が聞こえてきた方へ歩み寄れば、小さな、本当に小さな墓が、そこにはあった。
供えたのは、じにーだろう。
墓の前には真新しい花束、そしてその隣には、空になった酒坏が置かれていた。

かつての家主に、そっと手を合わせる。
どおりで、一目見ただけでも、素敵な家だと感じたわけだ。
遺された想い、それをじにーがしっかり汲み取って………
そんな事が出来るじにーだからこそ、彼女のもとにはこうして皆が集まるのだろう。

さて、まだ古民家で過ごす休日は幸いにも折り返しといったところ。
じにーは今日、どんな予定を用意してくれているのだろうか。
あげはの背中を急かすように、そっと初夏の風が吹き抜けていくのであった。
                      続く
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