まずは祭りの主宰、カミナヅキとソーミャに。
その次に、祭りを支えてくれた式神たちに。
ヒューザとリベリオのタッグによる心づくしの料理が振る舞われる。
「ほらよ、次はアンタのだ」
「……えっ!ええっ!?あ、ありがとう」
ふー、ふーと冷ましては頬張る先からこぼれるカミナヅキたちの笑顔にすっかり気を取られていたマイの目の前にも、ずいと焼き立てが突き出された。
配られる順番の早さに慄きながらも、モダン焼きの熱に立ち昇るソースとマヨネーズの甘酸っぱい薫りにたまらず箸は引き寄せられる。
ソースに溺れていても固さを損なわぬ天面を割れば、溢れ出す湯気の向こうに緻密に組み上げられた断面が顔を覗かせた。
ちょっとばかり顎に無理を言って、層を余さず口に運ぶ。
蒸し焼かれてしっとり柔らかなキャベツの甘みに魚介の出汁が見事に溶け合い、時折存在をアピールするカリッと焼き上げられた麺と豚肉の食感も好ましい。
「美味しぃ~!」
そこかしこ、モダン焼きが配られた端から、歓喜の声が上がった。
懸念だった数量だが、リベリオの頑張り様々で何とか集まった全員に行き渡り、実りの原はしばしの間、昨日までのような賑わいを取り戻すのであった。
そうして最後の晩餐を終えて、遂には祭りの名残は完全に消え去る。
湖上の祭殿へと続く参道は、挟み込むように居並んでいた出店が無くなると、何だか広さを持て余しているように映る。
「また来年、か~」
誰に向けるでもなく、ため息のように漏れて出た言葉を、ヒューザが拾う。
「祭りのあとってのは、いつだって物悲しくなるもんだ。だがな、こういうのは、たまにあるからいいのさ。ずっと続いたら、ありがたみがねぇ」
吐き捨てると、ヒューザは乱暴にドカッと膝を立てて腰掛ける。
「……それに何より、毎日子守なんざさせられたら、オレの身体が保たん」
そうは言いながら、カミナヅキと文通の約束を交わすソーミャを見守るヒューザの横顔には、柔らかな笑みが浮かんでいた。
「そうね。ふふ、じゃあもし祭りが毎日続いた場合は、私と猫ちゃんとヒューザさん、1日ずつ日替わりでソーミャちゃんとデートするのはどう?」
「…………冗談キツイぜ」
「あ、でも今ちょっと考えたでしょ?」
「考えてねぇ」
「嘘!間があったもん!!」
「ねぇよ、ンなもん」
喧騒は今しばし続き、来年の五穀豊穣を約束する優しい風が、一同をそっと撫でるように、やがて蒼天へと吹き抜けていくのであった。
~完~