前回のあらすじ
久しぶりの再会。マキちゃんの誘いに応じた「私」は、昔と変わらぬ軽口を叩き合いながら待ち合わせ場所へと向かう。しかし目の前に現れた彼女の姿に驚愕する。時間が止まったかのように、10年前と変わらないマキちゃん。その笑顔は相変わらず眩しく、一方で私は疲れた顔を隠しきれない。冗談混じりの会話は笑いを生むが、どこかに漂う時間の残酷さ。変わらないものと、変わり続けるもの。ラーメン屋へ向かう道すがら、二人の間にはかつての友情と、10年分の距離感が交錯していく。
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私とマキちゃんは車に乗り込んだ。目指すはお気に入りのラーメン屋。マキちゃんは助手席で笑いを堪えながら、どうにか平静を取り戻そうといる。私にはその表情が少しおかしくて、悪戯心が芽生えた。
静まり返った車内に突然の音が響いた。
「ブッ。」
「あはっ、くっさぁぁぁっ!ははははは!」
マキちゃんが堪えきれずに笑い出す。私も思わず口元を歪める。実を言うと、昨夜、私はにんにくの素揚げを三玉分平らげていたのだ。そのせいで発生した小さな事件。
そんなくだらないやりとりを繰り返しながら車はラーメン屋に到着した。
驚いたことに、休日にも関わらず店内は予想外に空いている。いつも通り、私は食券機の前に立ち、迷うことなく「大盛り」を選択。
「おじちゃん、全マシね~!」
隣ではマキちゃんが控えめに注文する。
「野菜普通、あぶらとにんにく抜きでお願いします。」
席につくと、マキちゃんは笑い疲れたのか、少しぐったりしていた。その表情を見て、また少し申し訳ない気持ちになる。とはいえ、ラーメンが運ばれてくるとその罪悪感もどこかへ消えた。
モリモリのもやしタワーが私の前に置かれた瞬間、マキちゃんがまた笑い出した。
「よく私に理不尽とか言えたなw」
その言葉に対し、私は真面目ぶった声で返す。
「車はガソリンだけでは走らない。定期的にオイル交換をしないと、すぐに壊れてしまう。そう、私にとってこのラーメンはオイルみたいなものさ。」
「何キャラだよw」
そんなくだらないやりとりをしながら、二人でズルズルと麺をすすった。
ラーメンを平らげる頃、マキちゃんがテーブルを軽く叩きながら宣言した。
「食べ終わったら、カラオケね。」
やっぱりか、と私は心の中で呟きつつ、適当に返事をする。
「うぃ。」
マキちゃんがストレスを溜めると、カラオケへ行きたがるのはお決まりだ。ただ歌うだけではなく、大声で愚痴を吐き出すのが目的でもある。
こうして私たちは再び車に乗り込み、次なる目的地へと向かったのだった。
第4章へ続く