天界・第三管理層——
そこには、日々人間に「運命」を与える神々がオフィス勤務している。
なかでも特に恐れられ、そして話題に事欠かないのが──
「はい不運。理由は顔面が好みじゃないから。異論は? ないわよね?」
幸運と不運を司る女神、ヴェルネリア様である。
◆朝のルーティン:顔面チェックとコーヒー
ヴェルネリアは朝が早い。
6時には天界スタバで「低脂肪ラテ・光属性・ノンカルマ」を頼み、
そのままオフィスの玉座……もとい、でっかいふかふかチェアに座る。
「さて、今日も人間の顔チェックから始めるわよ~」
数千人分の顔写真を一瞬でスクロール。
しかし、ただの顔ではない。**「ムカつく顔かどうか」**を独自AI(ヴェルネリア脳)で判定しているのだ。
「この子、顔は良いけど“自信ない系”のくせに謎の上から目線。はい、不運。ちょっとつまずく石を配置っと……」
「こいつ、爽やか風イケメンなのに腹黒臭がすごい。うーん……うん、好みじゃないから不運2倍盛りで♥」
そう、彼女にとって運命配分は「気分8割・観察2割」。
ただし、不公平かと言われれば、それは違う。
「努力してる人にはちゃんと幸運あげてるし? でもその努力が鼻につく人には……もちろん不運♥」
◆たまにある私怨業務:特別枠
「この名前……“中村海翔”……あんた……あのときの……!」
突如としてヴェルネリアの目に炎が宿る。
それはかつて人間界で、彼女が人間の姿で降臨していた時代──
サークルの飲み会で彼女に「天然でしょw」と言った男子である。
「私がどれだけ計算して生きてると思ってるのよッ!天然じゃなくて“戦略”よ!」
即座に「彼の乗る電車がいつも3分遅れる呪い」が発動された。
これには部下の天使もドン引きである。
「……あの、ヴェルネリア様。これ私怨では……?」
「ち・が・う・の♡ これは“過去の因果に基づく因果律の調整”ってやつ!」
◆人間観察タイム:ご褒美とおかわり
ヴェルネリアはその後、"幸運と不運を与えた人間"の行動をモニタリングする。
まるでバラエティ番組を見るようなテンションだ。
「不運を乗り越えて婚活成功!? え、すご……じゃあ結婚式で雨降らせとくね」
「え、幸運を手に入れて謙虚になった……うわ、推せる。次のガチャ当てさせてあげよ♥」
「逆に幸運で調子乗った? ダメね、あんた“人間界バブル期”みたいになってる。破産ルートいきまーす♪」
まさに、女神様の気まぐれドミノ倒し。
◆本日の業務終了
夕刻。ヴェルネリアはふうとため息をつき、羽根のように柔らかい椅子から立ち上がる。
「今日もいい仕事したわ。誰かが『不公平だ』って文句言ってたけど、それ、神様に言う? 言わないよね? そういうのが“不運の素”になるのよ♥」
神は祈りを聞かない。ただ、見てるだけ。
そして、ニヤニヤしながら運命を振りまくのだ。
〜おわり〜