反応があると嬉しいものです。
という事でさらに調子に乗ってまた書きました。
今度は全三話のクエストに挑んだ態のご先祖様小話です。
なおこれは1ユーザー、1読者の妄想による創作物です。
公式の作品との齟齬などが溢れかえるかも知れません!
本気にせずにお楽しみくださいませ。
※2018/03/12の出会い編の続きでもあります。
◆◆◆『怨楽のしらべ1 エルフ少女とプク男子』◆◆◆
規格外のスティックにドワ男がツッコミを入れた直後、溌剌とした声が飛び込んでくる。
「もう! わたしはいつまで待てばよろしいのですか」
両手を腰に当て、胸をそらせて真っ直ぐな瞳でドワ男を見据えるのは、年端も行かぬエルフの少女だ。
絹糸に負けぬ煌きをそなえた銀髪は、額で綺麗に切りそろえられ、薄紫の大きな瞳がドワ男を射抜いている。
「あ…」
今思い出したと口に出しかけたところをぐっとこらえ、ドワ男は涼しい表情を作ってみせる。
「待たせて申し訳ない。少し、昔なじみとの話に花が咲いてしまったようだ」
「いや、今更そんな顔されましても。思いっきり大声でしたから外まで筒抜けでしたわよ」
半眼で嘆息をつかれてしまいドワ男はまったく格好がつかない。
「いやー、すごいねこれ! むかしむかし、船の櫂で決闘に挑んだ戦士がいたらしーけど、そういう実戦的な圧がにじみ出てる!!」
その横をするりと走り抜けて、シャクラが手にした特製スティックをしげしげと見つめるプクリポはエルフの少女と対照的に、鮮やかな桜色の毛並みが泥だらけ埃だらけだ。
だが、纏わりつくそのプクリポにシャクラは気にせず笑みを向ける。
「自分と状況に合わせて戦うのは重要じゃけぇの。武器もおのずとワシ好みになっていくだけよ」
「うーん、スタイルの確立ってのは大事だよね! オガ男ちゃん話せるぅ」
「だれがオーガ男子だ、誰が! ふはははっ」
プクリポとエルフは互いに笑って、小さな手と大きな手をがっちりと握り合わせる。
「クレイ様までお話に夢中になられては困りますわ! はやく夢幻の森の探索に向かいましょう」
その様に慌てて少女が主張すると、クレイと呼ばれたプクリポはドワ男の背中をぐいぐい押し始めた。
「依頼人に言われてはしかたないねー。ほらほら、買い物は今度にして行こう行こう♪」
「あ、こらクレイ。せっかく三葉楽人、カミハルムイ領、期待の新星マルテラト嬢という感性豊かな才人の護衛なのだ。相応しい扇を選ばせるべきだろう、ここは!」
ずりずりと押されていくドワ男達を見送るかに見えたシャクラは、ここでこきりと首をかしげる。
「マルテラトちゅーと、去年の祭りで見事な笛を披露しっとった子じゃのう。今年でまだ十の娘が、夢幻の森探索とは酔狂なこと」
「見聞を広げる事が、わたしの音に更なる色を与えてくれると考えての事です」
ほんの少しの動揺を見せたマルテラトの声を隠すように、ドワ男が振り返り前に出る。
「クレイもボクも弱くはない。引き際も知っているから心配は無用だ」
「そーそー。森の南の方でぴーひゃらどんちゃん聞こえるって噂を確かめに行くだけだよ♪」
自信満々に親指を立てるクレイは、容赦なく依頼内容を公開していくスタイルだ。
「ほう、そうりゃあちと面白そうじゃのぅ。よし、ワシも行くとしよう!」
シャクラは一つ頷くと、工賃を職人に払い三人に合流するのだった。
〔続く〕
※三葉楽人。独自設定のエルトナ大陸各地の音楽の名門。ツスクルの琴、アズランの太鼓、カミハルムイの笛が特に有名。
※ちなみにご先祖様をドワ男としているのは、連載の方で何か名前がでてるかもしれないという小心者的理由です。コミック派なのですよ。