こちらは1ユーザー、1読者の創作です。
『2018/5/5』の日誌が冒険編(1)になります。
『5/6』に(2)、『5/7』に(3)、『5/10』に(4)があります。
公式の作品と齟齬があると思われますが妄想なのでそういうものです!
◆◆◆『怨楽のしらべ5 決戦! 魔鼓打霊』◆◆◆
ドドォォーーーーーン!!!!
隠し扉の仕掛けが解除される駆動音を圧する砲撃のごとき太鼓の音が響き渡り、パックリと開いた扉の奥には爛々と輝く大小の赤い瞳が二対。
そこには誰も見たことのない異形のモンスターが立ち現れていた。
「オオオ。許サヌゥ。我ガ道ヲ閉ザシタ凡愚ドモ! 心血注ギシ芸術品ヲ解サヌ獣ドモ! 羽虫ドモォォ!」
緑色の膨張した幽霊が人面の大太鼓を携えたその姿、歪みきった執着が両方の顔を醜く歪ませている。
「正道を外れた自分を省みる事のなかった者の末路か。払わせてもらおう!」
「こりゃあ邪気を貯めすぎとるのう! 腹を下す前に鎮めちゃるけえのォ!!」
打ち鳴らされる太鼓のリズムに惑わされず、ドワ男もまた自らの太鼓を打ち鳴らし、仲間達の意識を先鋭化させる。
緑の魔鼓打霊、ドラムゴートに肉薄するシャクラが呼び出した舞の幻魔クシャラミが、さらに仲間達の筋力を増大させる。
「ぬうりゃぁ!!」
スティックとは到底思えぬ質量が大剣の如く打ち込まれると、ドラムゴートの霊体は手にした二本のバチを交差して受け止める。
「エルフ皮、モラッダア!!」
互いの力と力が一瞬の静止を生み出した瞬間、太鼓が大口を開けてシャクラに齧りつく。
「クレイ様を忘れるなよー! スキルクラッシュ!!」
突如ドラムゴートの真下から声がする。脚のない幽霊である事を利用して、クレイが滑り込んでいたのだ。
小さな体に急制動をかけて両手に闘気を込めると、真上に向かって輝くエネルギーの双爪を捻り込む。
強烈な衝撃に跳ね上げられドラムゴートの大口は空を噛む。
「ヌハハ、こりゃなかなかの突き上げぜよ!」
さらに驚くべきは下から上への衝撃を利用したシャクラの体術だった。スティックが持ち上がるのと同時に、後ろへ宙返り。半歩空いた間合を加速に使い、豪槍かくやといわんばかりの突きがドラムゴートに打ち込まれる。
「グヌアアア!!!」
痛打を受けて怒りを目に宿しドラムゴートが太鼓を乱打しはじめる。
「何か、聞こえますよ!」
柱の影に身を隠したマルテラトの声と同時に、秘密工房の床や壁のどす黒い染みから、呪詛を吐きながらタタリ御前達が沸きあがってくる。
「また大群か!」
「隠し扉を抜けさせるなよなー!」
「クレイに言われるまでもない。扇使いを舐めないでもらおう」
言うが早いかドワ男は懐から紙片を取り出すと、扇で花ふぶきの如く縦横無尽に舞い躍らせタタリ御前の視界を奪う。
「基礎の基礎を大事にするってのは、まさにこういうことだ」
扇使いの基礎技の一つを見せつけ、ドワ男がドヤ顔になるのも頷ける。
タタリ御前達は互いにぶつかり合い混乱をきたし始めた。
その合間を縫って、シャクラとクレイがドラムゴートを追い詰めていく。
「我ガ恨ミィィ!!!!」
「そいつは、この世に残してはおけんからのォ! 鎮めさせてもらうぜよ!」
「これで終わりだー!」
シャクラの遠心力を乗せた一撃が太鼓を、クレイの地を這う龍気が霊体を同時に捉えた時、ドラムゴートはついに砕け散り、霧散していったのだった。
「あ、消えていく」
「怨念に引き寄せられて形をもっただけだったようじゃのぅ」
崩れていくタタリ御前達を眺めてマルテラトもほっと胸を撫で下ろす。
「大勝利! 一件落着だねぇー♪」
クレイがひょんと飛び跳ねてシャクラやドワ男とハイタッチする。
「ああ、大団円…じゃない!!」
同意しようとした矢先、ドワ男が突然驚愕の表情を見せる。
「え、ええっ!? な、なんですか?」
びっくりする少女の様子もなんのその。ドワ男は慟哭する。
「何故に支援一辺倒のまま、戦いが終わってる!? ここから主役たるボクの華麗な見せ場だろうに!」
……。
「ぷっ。あははは、えー!? うそ、そんなこと? あはははっ」
あまりの言葉に大笑いするマルテラトと、いつもの事だとドワ男の肩を叩くクレイ。
そんな様に、なかなか楽しい縁を得たとシャクラも笑うのであった。
なお、謹慎中に抜け出した少女が、こっぴどく叱られるのはもう少し未来のお話。
〔おしまい〕
※あれ? 気づいたらクレイの方がシャクラと仲良し!?
でも連携した動きって考えるの楽しいからしかたないか!