昨日に続いて二次創作後半です。
『2018/10/20』の日誌が新技編(1)になりますよ~。
◆◆◆台風輪舞の産声(2)◆◆◆
※重ねて言いますがノトさんの一人称、口調、性格、過去などはすべて勝手な創作です!
「うおー!! 高っけー!!」
ドワ男の頭頂を蹴った次の瞬間、ソウラの体は天高く舞い上がっていた。
(ジャン)ピング台フーン。
ピンクタイフーンを改良したその技は、恐るべし生きたジャンプ台なのだ。
「ソウラなら慣れたらもっと高く飛べるよー!!」
眼下で手を振るノトが叫んでいるのが見えて、自然とテンションも上がってくる。
「降りる、というか落ちてくる時は体のひねりと開きで、調整してねー!」
なるほど、上がれば落ちるのは道理である。
だが、ソウラの表情に高揚はあれど、焦りはなかった。
(こんなところでも渦潮剣術の特訓が生きてくるなぁ)
落下地点を見定めて、体を縮めて角度を調整、そこから回転を加えれば、天から降る矢のごとくプクリポの小さな体が空気を貫く。
「ここでどうだ!」
地面が迫ると同時に、腕を伸ばして大きく剣を薙ぐ。さらに体全体を開いて急減速。接地に合わせてくるりと一回転して勢いを殺し、素早く立ち上がる。
「ど、わとととっ!!」
はずだったが、一回転では勢いが止まらない。ぐるぐるぐるんと三回転までいって、やっとソウラは停止に成功する。
「うう、回りすぎた…。さすがに一回目から完璧にはいかないか」
埃を払って立ち上がると、ノトとワッサンが興奮気味にやってくる。
「いきなりやるじゃない! 今度は一緒に飛ぼうよソウラ!」
「いいバトル扇子、いやセンスだ。しっかり付き合ってやるから、ソウラの戦い方についても色々聞かせてもらうからな!」
二人のテンションに面食らったソウラだが、ふと聞いてみたくなった。
「二人とも、技を磨くのに熱心だけど、理由とかあるのか?」
「ソウラこそ、午前中も訓練に熱心だったようだが、まあ、聞きたいのなら聞かせてやろう!」
ババっと今度はクロスさせた腕で上下に扇を構えて、ワッサンがポーズを決める。
「誰よりも美しく舞うドワ男になることこそボクの運命! それはたとえ戦場であろうともだ!」
「あと団長に勝ちたい? というか、団長より目立ちたいんだよね。ワッサンは♪」
!?
とんでもない速度でノトに向けたワッサンの顔には『なぜそれを!?』と書いてあるのがソウラにも見える。
「いや、結構みんな知ってると思うよ。宴会とかで酔うと口走ってたし」
「うわあぁぁぁ! もう禁酒するぅぅぅ」
本人的には隠したかったのか、ワッサンは完全に膝から崩れ落ちた。
「まあ、団長を目標にって人は、ここには少なくないと思うからそんな落ち込まなくても」
悪かったかなあというように眉尻を下げてフォローするノト。
「じゃあ、ノトも団長が目標なのか? 勝ちたいとか追いつきたいとか…」
ソウラの頭にちらりとアイツの姿が浮かんで、問う眼差しに真摯さが浮かぶ。
「憧れるくらい美しい所作の人はいるかな? 団長じゃなくて旅先で出会った女剣士さん。ライバルや目標とはちょっと違うけど、心に残ってるから、私も誰かの心に残るような踊り子ではありたいって感じかな♪」
差をつけられた旧友、ほんの僅かに交わり心に残り続ける異邦人、そして再び命を懸けて相見える強敵。
誰の心にも『誰か』がいて、先を目指す原動力となる。
「二人とも! 俺も負けられない相手がいるんだ」
大きく息を吸い込んで、ソウラが声を張る。
「だからさ、さっそく連携の特訓、始めようぜ!!」
少年の限りなくまっすぐな瞳に、感化され二人も表情を引き締める。
この日から数日ののち、ソウラとノトのコンビネーション『台風輪舞』が生まれるのであった。
<END>
※ワッサンの新技を実際に考えるのは楽しいです。賢者さんのドルマ系+アゲハ乱舞でナナホシ(天道)乱舞とか、衣装の腰帯に隠し扇子を仕込んで扇の舞・追演とか妄想だけはたくさん広がるのです。
※ノトさんの心に残った人は、巻末のコメントを参考にかげろう姉さんのご先祖様と勝手に設定してます。