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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2019-06-23 16:04:18.0 2019-11-10 14:05:25.0テーマ:その他

甘々の冒険者達『1話・甘い出会い』(DQX二次創作)

自キャラであるドワ男くんを主人公にした二次創作です。
彼が冒険者になったきっかけを書いてみました。
そういうのがダメな人は避けてくださいませ~。
漫画、蒼天のソウラも取り入れてます。

◆◆一話 甘い出会い◆◆

「そんな弱々しい踏み込みでどうする! 大幻魔が現れる迫力がまるで伝わらん!」
 重々しく響くような父の叱責が板張りの広間に響く。
 まだ年端も行かぬ少年は、手にした扇を握り直し目じりに涙をためて今一度だんっと、足を踏み鳴らす。
「まだだ。もう一度」
 500年は続くというドワーフの舞踊を受け継いだ父は、厳格で厳しい男だ。
 一方で、ボクはといえばやる事なす事がどんくさい。
「う、ぐず…っ、うわあぁぁん!」
 涙が零れ落ちるともう止まらなかった。父の怒声を背中にその場を逃げ出し、闇雲に走り続ける。
 廊下を駆け抜け、庭に飛び出して砂利を蹴飛ばしながら、正門は開いていなかったので、脇戸をくぐって一目散にひた走る。
 ふと涙で歪んだ視界に羽が見えた。
 カミハルムイには多くのエルフが住むので、ご近所の誰かの背中にぶつかってしまう!と気が付いたが、もう遅い。
 どんっと、衝撃があったかと思うと少年は、天地がわからなくなり意識が遠くなっていた。


「魔女様、魔女様~! 大変なんですぅー!」
 スウィ~ツランドの妖精レクエは甘い空気をかき分けて、この世界を治める魔女シュガーのもとに飛び込んでくる。
「そんなに慌てて、どうしたというのです?」
 おっとりと聞くシュガーにレクエは取り付いてあのねあのねと説明する。
「たまには餡子がいいかなーってカミハルムイに出かけたの! 今日買った新作の桜餅は、塩漬けの葉っぱの加減が絶妙で、餡の甘みを最高に引き出してて大満足の一品だったわ! でもでもこっちに帰る直前にドワーフの男の子にぶつかられちゃって!! なんとなんとその子もこっちに落ちちゃったの!! 気を失ってるみたいで動かないし、買ってきた分のお饅頭はその下敷きだし、その子はうんうん言いながらうなされて泣いてるし! でもでも、桜餅は潰れてるだろうから私も泣きたいしぃ! あー! でもまずは心配しなきゃだよね! どうしようどうしよう魔女様!!」
 いったい何処で息を継いでいるのかというほど、途切れることなく紡がれる言葉に、えいっとマシュマロで栓をしてシュガーは案内を促すのだった。


 レクエの心配とは裏腹に、少年に怪我と言えるようなものは何もなかった。
 シュガーは自室のベットに少年を寝かせると、餡子まみれになっていた少年の上着を不思議な魔法で洗い始める。
 ソーダ水の飴玉のような水の球の中で、くるくると踊りまわる上着はふんわりと極上の香りを纏ってピカピカになっていく。
「わぁー。なにこれ、すごい」
 目を覚ました途端、眼前で繰り広げられる手品のような光景に、少年は涙の跡もそのままにまんまると瞳を見開く。
「おはようアストルティアの迷子さん。どこも痛くないかしら?」
 声を掛けられて初めて少年は、シュガーを認識する。
 オーガの如き大きな体、アストルティアの民とはどこか異なる魔性の美しさ。
「幻魔…? ううん!? 魔物!? あわわわっ!」
 先ほどまでとはあまりに違う状況に少年はパニックに陥り、今にも泣きだしそうだ。
「まったく、今日はみんな大慌てなのね。えいっ」
 シュガーはどこからともなくブラウニーを取り出すと、少年の口にひょいと詰め込む。
 !?!?!
 途端にチョコレートの濃厚な甘みが広がり、少年の歯が自然とナッツのアクセントを感じながら生地を噛み切る。
 最初の弾力を超えた後に、ふわっと感じる柔らかさが感動を呼び、甘みはさらに無限に広がっていく。
 初めての甘さに、涙は引っ込み、混沌とした思考は舌にのみ集中していた。
「おいしいでしょう? こっちに紅茶を用意していますよ」
 木造りの小さなテーブルには湯気の立つカップが置かれ、シュガーが微笑む。
 少年の心に、もはや恐慌は欠片も残っていなかった。


「これ…すごい! 美味しい。おやつなの?」
 もくもくとブラウニーを味わい尽くし、紅茶を一口飲んでから少年は口を開いた。
「チョコレートケーキのひとつよ。初めて食べた?」
 こくりと少年は頷く。
「おせんべいとかお団子とかがうちのおやつだよ。ケーキは聞いたことがあっただけ」
 興奮を隠せないその少年の顔に、甘党のシュガーは嬉しくなる。
「あらあら、それならこちらはどうかしら? そうそうプリンやエクレアも出しましょう」
 言葉とともにあっという間にテーブルに、色とりどりのお菓子が並べられていく。
「わぁぁ♪」
 信じられない光景に目を輝かせる少年は、これまで味わったことのない喜びを感じるのだった。


(続く)
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