注:二次創作だよ!
◆◆5話 それは突然に◆◆
「どーどどーん! みつけたど!」
スウィ~ト達がほっこりしているその時、ベツゴウ宅を見つけて喜色を浮かべる者あり。
ずんぐりとした大きな体躯、背中には一対の翼、派手にそそり立つ頭髪。いや鶏冠!
半鶏半人の魔物、ドードーどりであった。
「お嬢様、ついに突き止めましたぞ。レシピは必ず持ち帰るどーん!」
マッチョにポーズを決める魔物を中心にペタペタと気の抜けた拍手のような音が鳴る。
「よしよし、おめーたちも感無量なのだな! よし、どーっと蹂躙開始どー! レシピを手に入れるのだ!」
早朝の鶏のようなけたたましい掛け声と共に、拍手をしていたタップペンギー達は走り出したのだった。
「今の声…」
「やばい…予感…」
二言のやり取りで、冒険者は動き出す。
「おじいちゃん、スウィ~トの後ろに、いて…」
扉の前に構えて、両手にそれぞれ剣を握るアイシス。
広げていたレシピとメモを、長年愛用している菓子袋に詰め込んで、ベツゴウを背にかばうスウィ~ト。
刹那、ばーん!と派手な音が響き、扉を押し倒してペンギンに似た魔物達が押し寄せてくる。
「こういう予感ばっかり…当たる?」
表情を変えずに、唐竹割で先頭の一匹ばっさり、さらに踏み込みつつ逆手の刃を横一文字に薙ぎ払い、室内に広がろうとするタップペンギー達を押しとどめる。
たまらず後方の一匹がメダパニを唱え始めたのを、スウィ~トは耳ざとく捉えて、掲げたペロリンステッキを呪文加速補助に使い、アイシスにマホターンを僅差で掛ける。
くけっ?!?
反射された混乱呪文で棒立ちになるタップペンギー。搦手をスウィ~トが防ぎ、アイシスが刃にて侵入を完封する。
たった二人の見事な籠城戦に、少しばかりベツゴウが安堵を得たその時だった。
「マッシュウ様、参上だどー!」
壁が吹き飛び、どーどー鳥が室内へと飛び込んでくる。
「あー、ド派手に来たねえ…。菓子折りとか持ってると、嬉しいなあ」
アイシスは多数のペンギン魔物の相手が忙しい。
となればこちらはスウィ~トがやるしかない。軽口を叩きながら、ステッキをバナナにこっそり持ち替える。
「どーどどどっふっ。土産はこっちがもらっていくどー♪ ここに魔法のレシピがあるはずだどー」
「な、なんで魔物がレシピなんぞ!?」
あまりの驚きに声を上げるベツゴウ。
存在の確信を得て、魔物がくちばしをニヤリと曲げたように見えた。
「魔物がわざわざ奪いに来たものを、冒険者の一人として渡すわけにはいかないな。戦闘では甘くないスウィ~トスター☆がお相手するぞ♪」
「このマッシュウとサシでやるとは、いい度胸どーん!」
地を蹴り迫る巨体に、スウィ~トはバナナ型の扇を広げて、突進した。
「むぎゅぅん!」
「ワッサンボンッ!!」
アイシスの焦りの声が響く。
結論から言うと、スウィ~トはボコられて失神寸前であった。
即席ボディーガードデコイを囮に花吹雪からの搦手、意外と器用な立ち回りで、扇とバギの混合斬撃! マッシュウを面食らわせたのは良かったが、パワーとスタミナの差が大きすぎたのだ。
「レシピはどこだど? 出さないとこのまま踏みつぶしちゃどーん。おっと、そうそうそっちのオーガも動くなだど」
倒れたスウィ~トに片足をかけて、マッシュウが勝ち誇る。
ほとんどのタップペンギーを斬り伏た後だったが、人質を取られてアイシスも手が出せない。
「ま、待て。レシピの持ち主はわしじゃ。若い衆を放せ。人質ならわしでよかろう」
ゴホゴホと咳を交えながら立ち上がるベツゴウ。
「なら早く出した方がいいどー。いつ重心のバランスを崩すかわからないど」
身体を前後に揺らして、踏むぞ踏むぞとプレッシャーをかけるマッシュウ。
(こんな使い方は不本意だけど、緊急回避だ。許せまんまる飴ちゃん達!)
その慢心をついて、忍ばせていた限りなく丸い飴ちゃんを足と胴の隙間に潜り込ませ、スウィ~トは思いっきり体をひねる。
「どどどわっとと!?」
コロコロと足がすべりつんのめるマッシュウ、弾かれるように後方、つまり壁の穴側に躍り出たスウィ~トは、とっさに懐を漁る。
(アイシスと二人でも、ベツゴウさんをかばって勝てる気がしね~。レシピを囮に逃げ切ってみせる!)
目くばせで合図されたアイシスには躊躇が見えるが、動き出した口は止まらない。
「へへーん。油断大敵~。レシピはボクの大事なお菓子袋に入ってるけど、絶対渡さな~い♪」
ばばーんとスウィ~トが突き出した右手にはピンクの菓子袋。
だが何という事でしょう!
そこにはニンマリとしたお目目、大きなお口、びろんと伸びた舌がついていたのでした。