DQXの二次創作小説。独自解釈などあるから注意! 苦手な方は退避デス。
1話は2019/06/23の日誌から。
◆◆7話 それはともかく財布が軽い◆◆
魔法のレシピは何らかのお菓子だと思う。
ベツゴウとアイシスの共通した感覚を頼りに、スウィ~ト達はオルフェアの町、料理職人ギルドに来ていた。
「ごめんなさーい。待っててくれたんだよねっ。あ、アイシスちゃんはお久しぶり! あたしこそ調理ギルドの新人マスター、クッキング☆エンジェル ポシェルだよっ!」
「そのセンス。いいね!!」
「うん、知ってる…」
まん丸つぶらな瞳には夢を、外側にぴょこんと跳ねた金の髪には快活さを、限りなく白く輝くコック帽には誇りを、握った手には愛を。
一言の挨拶と握手でただ者でないと興奮するスウィ~トとは対照的に、アイシスはとってもクールだ。
「ひや~ん! アイシスちゃんは今日も、頬張れば蕩けるジェラートちゃんだね」
もっともポシェルは慣れているのか、にこにこと握手して、その手をぶんぶんと振っている。
「それでだね! ギルドマスター、いやクッキング☆エンジェル! このレシピについて意見を伺いたいんだ。ボクの見立てでは壮大でスウィーティーな冒険の予感がするんだよ♪」
互いの自己紹介を終えて、スウィ~トはざらめの中から、魔法のレシピを引っ張り出す。
正直一体化でもしてはいないかと心配したのだが、例のレシピは簡単に取り出せるのだ。
そのうえスウィ~トが持っていようが、アイシスが持っていようが、ざらめは元気いっぱいである。
そのような現状も含めてこれまでの話を聞かせると、ポシェルはふんふんと強いリアクションと共に聞き入っていた。
「なにか、わかるかーなー?」
手渡されたレシピを、上下を変えたり裏返したり、はたまた透かして見たりしていたポシェルはにっこりと笑う。
「すっごーく不思議! ワンダーでデンジャー? でも魔物が生まれるなんてポシェルわかんない♪」
ずっでーん!
スウィ~トスター☆は前のめりにぶっ倒れ、名前に負けぬ星を散らした。
「ボクの、ボクの期待はっ!?」
「ポシェルは魔物の事なんて専門外だもん。でもでもお菓子のレシピってのはあってるかなっ。ただ、なんだか欠けてたり、余計な部分があったりしちゃう感じ! 一つじゃダ~メ。セットメニューかもっ!」
「セット? 一枚では意味が…ない?」
「そう! 塩味の効いたベーコンとミルクの甘みと酸味を感じるモッツアレラのように♪ 濃厚な風味の鴨肉に爽やかなオレンジのソースを合わせるようにっ、ご一緒するととっても素敵な予感だよっ!」
ポシェルは小さなお手々を握って親指を立てる。
「あのマッシュウとかいう魔物も、数を集めてるわけか~。これはまた来るよねぇ」
だろうな~という考えが確信に変わり、スウィ~トはむむぅと唸る。
「私達、もしかしなくてもやる事…多い?」
「パーティーの補強、他にあるかもしれないレシピの情報集め」
「さらに敵も、ざらめも謎だらけのまま…」
──しかも。
ゴールドが足りないっ!
二人の意見は完全に一致した。
ちなみに前回のクエストの依頼料はレシピの礼も兼ねて、修理費として半分以上をベツゴウに押し付けたのだ。
「わー。大変そうだねっ! ギルド依頼受けていく? バランスパスタの急ぎの依頼があるよっ」
ニコニコと提案するクッキング☆エンジェルのお誘いを、丁重にお断りしてスウィ~ト達はギルドを後にする。
「いきなりの強敵相手で、ボディーガードデコイも使い切ったし。あそこで見栄を張らないのも、ボクとしてはあり得なかったし…。ぐぅ、クエスト探さないと」
「スターはしみったれた顔できない? おかげで財政難…。うーん。箱舟代も節約したいところ」
景気の悪い顔の男女に、通行人も微妙に距離を開けて通り過ぎていく。
「いっそ、おどる宝石を狩り…まくる?」
「い、いやだ。なんかざらめの親戚襲撃するみたいな気分になるじゃん、それぇ!」
その昔行われたという金策にまで頼ろうとする段になって、幸運の女神はオルフェアの町に降り立った。
(見たところ冒険者のようだし、なかなか面白そ…いやタイミングが良かったんだこれは。うん、ちょうどいい。下の酒場まで歩かなくていいし)
魔法戦士団の青い制服に、鳥の顔を思わせるグラス付きの帽子をかぶったウェディの女性は、この幸運(?)を逃すまいと、スウィ~ト達に近づくのであった。