DQX及び蒼天のソウラの二次創作。
独自解釈等有りますので注意!
1話は2019/06/23の日誌から。
◆◆22話 スターの極致◆◆
「声を限りに叫ぼうと、地の利はオレにあるんだよォ」
広大なラギ雪原には容易にスプレッダーへと変貌させられるエレメント系の魔物が生息する。
大病魔の名に恥じぬほど、次々と手下を増産するインフル炎ザードは嘲るように笑っていた。
「一度は封じられた魔物、中心部を打ち砕き…核さえ見出せれば」
丸太のような足で、スプレッダーの腕部を蹴りつぶし、アロルドが歯噛みする。
多数を相手取るのに向かない事がこの状況を招いていた。
特にアロルドとアイシスが足止めされたままなら、勝てるはずがない。
今のボクの実力じゃ扇やバギでまとめて薙ぎ払えていないし、何か別の手を考えなきゃ…。
「もう一度足場作ったらいけないっ? って、ああ、こっちにも来てるじゃない」
ぱにゃにゃんも、眼前に迫ってきた一体に向き直りバギクロスで迎え撃つ。
スプレッダーを一か所に集める。
密に集る蟻のように。
それが出来るのは……やっぱりボクだ。
絶対に到達して見せる。今日は絶対ミスれない!
「よーし! 行く先々で子供達に寄って集られるスウィ~トスター☆ モンスターだって集めて見せるぞ!」
ららっ~♪
決意に何かを感じ取ったのか、ざらめが定位置へと飛び乗ってくる。
「さー魔物様方、お立合い~! そろそろ戦いもお疲れじゃな~い? 甘くて美味しいもの、欲しくなるよね~♪」
目の前のスプレッダーの振り下ろした腕を、くるりと回って避けながらスウィ~トが満面の笑顔を浮かべる。
「そんな本日ご紹介するのは、知る人ぞ知るエルトナの避暑地に受け継がれるかき氷! ほーら、インフル炎ザードくんも興味がわいちゃったかな♪」
信じられない程能天気な声の調子で、身振り手振りも忙しく踊るようにしながら口上は続く。
「じっくりと時間と環境だけで凍らせた透き通る天然氷が、名刀斬鉄丸にも匹敵する名工の刃が使われた氷削機で、ふわっふわに降り積もる様は、ボクちゃんの吐息で飛んでいかないかとハラハラドキドキ!!」
アイシス以外が面食らい、どこもかしこも戦いのリズムが崩れる中で、スウィ~トの調子はどんどん上がる。
不可視の力と共に。
「そこにとろ~り、たっぷりかかったのは~、絶妙な甘みと酸味を持つ苺、エルオトメの特製ソース! 作りたてのソースからは漂う濃厚な甘い香りが……んん~、もう我慢できな~い!!」
ららーっ!!
感極まったという表情で、器からスプーンで氷を掬い取り、ぱくりと口元に運ぶスウィ~ト。
同時にざらめもまた、それを食したかのような歓喜を高らかに謳う。
もちろんここに現物などはないっ!!
だが、その顔が、声が、漏れる息が……。
現実の認識を突破する時、モンスターであろうとも表現領域へと囚われる。
スーパースターの境地モンスターゾーン。
否、スウィ~トスター☆の極致、食レポゾーン!!
魔法儀式にも匹敵する表現力に、そこに求める物があるかのようにスプレッダー達が殺到する。
「ああ…食べてぇ……じゃねぇ!?」
「はう。かき氷でよかった。雪原じゃなかったら私も寄ってっちゃったかも」
炎ザードとマユミが同時に自分を取り戻す頃には、アイシスとアロルドは動いていた。
「今日のは…完璧、グッジョブ」
仲間の仕事っぷりに満足して笑うアイシスの表情が、刃の届く距離に達すると同時に引き締まる。
突然の接近を許し、炎ザードは毒々しい濃緑のブレスを吐き出すが、アイシスの二刀は止まらない。
「くっそお! この至近距離でオレの病になぜかからん!!」
「事前準備の勝利…。情報は大事。えいっ、やっ」
縦横に白刃が閃き、白き炎の身体に裂けめが走り、毒々しい筋張った果実の如き紫の核が、ちらりとのぞく。
「見えた…!」
引き戻した腕を突き入れようとした瞬間、インフル炎ザードの炎のような身体は激しく燃え上がりその傷を塞ぐ。
「残念。病まねぇなら、凍えて果てろよォ!」
その勢いは両腕まで広がり、冷気の巨大な棍棒となって振り下ろされる。
それを両手でがっちりとアロルドが受け止める。
両者のわずかな隙間に身をこじ入れる。
突き上げるように刃を滑らせ、今度は真一文字に裂き割るが、無理な体制からの二撃目は、またも修復によって阻まれる。
二人のオーガは休む暇なく攻め続ける。
斬り裂き、砕き割り幾度も核の保護を打ち砕かんとするが、終わる事のない修復がそれを阻む。
まだ一手。勝利には届かない…。