DQX及び蒼天のソウラの二次創作。
独自解釈、設定等有りますので注意です。
キャラクターの描写もあくまで私の気ままな創作ですからね~。
◆◆24話 妖精の国へ◆◆
「え~。来ないんだ」
「ごめんねベラ。今のマユミ達はアストルティアの冒険者だから、パーティーの仲間の所にすぐに戻ってあげたいんだ」
「まー、かいりはああ見えて寂しがり屋だしね。そろそろ戻ってあげないと泣いちゃってるかもしれないし♪」
申し訳そうなマユミと、皮肉っぽい笑顔の中に親愛を感じさせるぱにゃにゃん。
「むしろ礼をするのはこちらだベラ。オマエが来てくれた事で村中に病が広まる事も止められた。なんなら村人総出で歓待するべきかもしれないが…」
封じたインフル炎ザードを妖精の国へと戻さねばならないのだろう?とアロルド。
引き留めるわけにもいかないと、逆に申し訳なさそうな顔をする。
「もー、せっかくポワンさまに会わせてあげようと思ったのに。妖精の女王様なんだよ? めったにない事なのに」
せっかくの誘いをお断りされてベラが悔しげに言うと、緑と赤の腕が二本、勢い上げられる。
「行きます!」
「うん、行く…」
もちろん、ドワーフのスウィ~ト、オーガのアイシスの二人だった。
とくにスウィ~トには鬼気迫るものがある。
ポワンの力が関わるというレシピの事を聞く絶好の機会なのだ。
らら~ん♪
そんな本気を知ってか知らずかざらめもノリノリで跳ね回っている。
「そうそう、そういうのが欲しかったの! じゃあ元インフル炎ザードを運ぶのよろしくね♪」
ベラはぱにゃにゃんに負けず劣らずのいたずらっぽい笑顔をスウィ~ト達に向けるのだった。
ランガーオ村へ戻るアロルド達との挨拶を済ませると、夜の闇が差し迫る頃。一つの輝きが雪原に浮かぶ。
ベラに導かれるまま輝きの中に、あるはずのない階段を感じながら冒険者達は進んでいく。
景色が、輪郭が、意識すらがあやふやになっていく奇妙な感覚。
にもかかわらず心にはわくわくと安心が沸き上がる刹那と永遠の間を抜けた時、広がるのは春薫るのどかな村。
そこかしこで妖精たちが笑い合い。眼前の立派な巨木が天高く伸びている。
「あれ?」
先に気づいたのはアイシスだった。視界の隅に映ったざらめが妙に大きい。
「というか…高い?」
見回してみればまるで寝そべっているかのように、自分の視点が変わっている。
さらには、すぐそばには目を真ん丸にしているバブルスライム。
「ベラ? もしかして、これ……」
「あはは。びっくりした? アストルティアの人はこっちに来ると姿が変わっちゃうの! スウィ~トはバブルスライムで、アイシスはスライムベスみたいだね」
心底楽しそうに笑って答えるベラに、アイシスは脱力してへにゃりと型崩れを起こすしかない。
「アストルティアに戻れば、姿は戻りますよ。安心してください」
優しく威厳を含んだ声がアイシス達にかけられる。
「ポワンさま! 今回お手伝いをしてくれた冒険者達を連れてきちゃいました」
「見ていましたよベラ。よく務めてくれました。お二人も、あなたも、ありがとうございます」
一対のマーガレットの花飾りが藤色の髪で大輪を咲かし、野に咲く可憐な名も知れぬ花を思わせるドレスに身を包んだ妖精女王は、膝を折ると優しくざらめを撫でる。
「えっと、とりあえず姿の事かは置いといちゃう! ポワンさま、ボク達聞きたいことがあってここまで来たんだよ!」
ぽこぽこと泡を沸かせながら、溶けかけたアイスクリームのようなスウィ~トがレシピを取り出す。
「本当に奇妙な縁ですね。再びこのレシピを手にするなんて……」
ポワンは懐かしそうにレシピを受け取ると、若草色の瞳を閉じて思いを馳せる。
「昔々、この魔法のレシピを携えてやってきたのは二人の男達でした」
静かに語り始めたその言葉に、どこにあるのかもわからないスウィ~トの喉がゴクリと鳴った気がした。
ほんの偶然から舞い込んだレシピ。
そこから始まった魔族との因縁。
それが紐解かれるのかもしれないという期待が胸にこみ上げる。
「魔族のバーウェンと人間のポルリオン。二人は各々が目指す究極の菓子のために世界を旅し、妖精の国にすら辿り着いたのです」
「それがリモの師匠…」
スウィ~トの口から漏れた言葉を柔らかな春風がさらっていく。
まるで妖精上の語る思い出を、遮らぬためのように。