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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2020-03-22 11:20:25.0 テーマ:その他

甘々の冒険者達『30話・姉と武者修行の少年』(DQX二次創作)

DQX及び蒼天のソウラの二次創作。


◆◆30話 姉と武者修行の少年◆◆

 姉は音楽を愛する人。

 姉は交流を尊び多くの友を持つ人だ。

 姉は戦場に立てば…剣気鋭き達人、バトルマスターでもあった。


「おねえちゃん! わたしも二本振れるようになった」
 当然のように憧れていった。

「私もついていきたい!」
 実力もないうちから我儘を言って、叱られたりもした。

「ん…まだ、お客様だ」
 何とか自分の身を守れるようになって、幾度か姉達と冒険をしても、足りない事ばかりが見つかった。

 姉妹の間に横たわる大きな溝。
 その差に行き詰まり、迷い始めていた頃。

 手合わせをする事になったのはまっすぐな瞳の少年だった。




 師匠は言った。彼女の才気は本物だと。

 師匠は言った。だが君と同じくまだまだ伸びしろもあると。

 師匠は言った。自由奔放な二刀と、積層し続けた君の二刀がしのぎを削れば、その鋭さはさらに増すだろうと。

 そしてその言葉は、武者修行の申し入れを快諾されて数日、すぐに実感できた。

 ただ純粋に剣技が磨かれていくのが分った。
 魔力の流れではなく剣に血肉が通うかのような感覚をつかみ始めた頃。
 ふと、彼女は言ったのだ。

 妹と手合わせをしてもらえないかと。

 そうして俺の前に立ったのは瞳に不思議な穏やかさを秘めた少女だった。




 リュウガくん。
 自分より年下かなと思ったその少年は…恐ろしいほどの手練れだった。

 漆黒と白銀の二振りの剣は、その瞳と同じように真っ直ぐに迷いのない軌跡を描く。
 翼飾りのついた上半身の金属鎧など、まるで重さを感じさせない連撃が続く。

(でも…見えてるっ)

 幸運なのは、私も二刀流とは戦い慣れている事。
 お姉ちゃん程の使い手と、修練を積む機会を持っていた事。

(来る! 右っ)

 彼の右手首が最小限の動きで捻られると、伝えられた力が切先を死の導き手に変える。
 もちろん手合わせであり、彼の実力からも殺される事はないはずだが、それを忘れさせる程の精緻な一手。

 刃の深い所でそれを受け止め力を逸らすが、彼もその程度で体を泳がせたりはしない。

「せいっ!」

 踏み込みと同時に左下段から刃が繰り出される。

「まだっ!」

 上背を利用して重力を味方に、こちらももう一刀で上から押さえつけると、互いに剣が弾かれる。

「かえん斬りっ」
 再び剣を振り下ろし、筋力とは別の力を乗せる。
 炎を上げた刀身が迫る中、彼の剣はまだ下段に留められたままだ。

 寸止めしなきゃ!傲慢にもそんな意識が生まれようとした瞬間、燃え上がる刃が肩当ての表面をがりがりと滑る。
 正しい力の方向性は失われ、彼の青い髪を数本焦がしながら、私の剣は何もない空間を薙いだ。

「そこまでー」
 姉の声。
 気づけば彼の右手に握られた剣が、私の胴体ギリギリで鈍く光っていた。

 世界は本当に広い。
 彼はただの一度も、特別な技を見せなかった。
 私ももっと頑張ろうと、この時はただ素直に思えた。




「ありがとうね。お願い聞いてくれて」
「いえ、俺の方こそ、ここ数日ありがとうございます」

 旧知の友の如く、遠慮を置いておきたくなるような笑顔で言うイストにもリュウガは礼儀正しい。

「で、どうだったアイシスは?」
「えっ。そんな! 俺もまだまだ人を評するなんてっ」

 思わず本気で慌てて、赤面してしまった事に気づくとリュウガはさらに顔が熱くなるのを感じる。
 いったい自分をどれほど評価してくれているのかと、少年は混乱するばかりだ。

「実力で言えば十分な気もするけど。んーじゃあ、こう聞こうか」

 ──あの子の剣、怖かった?

 イストの表情に本気が見て取れた。
 その途端、リュウガは理解した。

 自らも今日この日まで。幾度も命のやり取りがあった。
 剣で殺し、剣で殺される日々の中でなお剣を握る。

 幸運にも助けられ何とか抗い、瀬戸際で生かし生きる事を選び続けられているが、バトルマスターとしての“業”が自らの剣に宿っている事も知っていた。

 だから彼女の心配が、姉が妹を思う気持ちが伝わって、リョウガはより一層姿勢を正して口を開く。

「いいえ。正確で綺麗な剣筋で…優しいと思います」

「そうだよねー」
 ぐてーっとテーブルに突っ伏してイストは脱力する。

「あーもー。なんで冒険者かなー。せめてバトルマスター以外の~僧侶とかならさぁ~」
 もしかしたら彼女も、いままで憧れられる姉として溜め込んでいたのかもしれない。
 だから、その日はついついだばーっと垂れ流してしまったのだろうか?


 とにかく、語り合う二人の気持ちなんて知る由もないまま、アイシスは…私は、それを聞いていた。
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